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大手出版3社『漫画村』判決に納得 元運営者に17億円の賠償命令は「妥当なもの」

(C)ORICON NewS inc.
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 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の会員であるKADOKAWA、集英社、小学館の3社は18日、都内で『漫画村』に関する民事訴訟判決の記者説明会を開催した。同日、東京地方裁判所は『漫画村』の運営に関与した者に対して、17億3664万2277円の損害賠償金の支払いを命じる判決を言い渡しており、これについて会見では「妥当なものと考えております」と伝えた。

【写真】『漫画村』から受けた被害説明…会見で公開された資料&コメント

 3社は2022年7月28日に出版コンテンツの海賊版サイト『漫画村』の運営者に対し、3社が共同して総額19億円2960万2532円(17作品)の損害賠償を求め共同提訴していた。

 『漫画村』を巡っては、出版業界をあげて対応すべき最重要案件であるとして、ACCS会員社が刑事事件の共同対応を進め、2019年7月から9月にかけて、運営者を含む4人が6都県警察合同捜査本部により逮捕され、2019年11月~2021年6月、いずれも福岡地裁で有罪判決が確定している。刑事事件の捜査後、「漫画村」は閉鎖に至り、社会的警鐘を鳴らした。

 『漫画村』は漫画コミックスや漫画雑誌はもちろん、一般雑誌や写真集、文芸作品などあらゆる出版コンテンツ約8200タイトル(約7万3000巻相当)を掲載し、最盛期には月間アクセスが1億に迫ると推計されるなど、違法な掲載によるタダ読みを通じて甚大な損害が発生し、その被害回復はされていない。

 3社は、刑事裁判の進捗を踏まえつつ、同時に損害賠償請求手続きに向けた具体的検討を進め、『漫画村』により受けたと推計される損害の一部である総額19億2960万2532円の損害賠償金の支払いを求めて共同して提訴。そしてこの日、判決が言い渡された。

 原告3社は会見で共同コメントとして「当時最大規模であり海賊版サイトの象徴でもあった『漫画村』に関し、刑事処罰を求めるのみならず、民事上生じた責任を追及することは、著者が安心して創作できる環境を整え、心血を注いで生み出された作品を預かる出版社の責務であることから、原告3社が共同して提訴いたしました」と経緯を説明。

 「『漫画村』により出版コンテンツに生じた甚大な損害は今なお深く、その全てを回復することはできませんが、本判決において原告3社の主張が認められ、原告3社の17作品に限ってもその損害額が17億円強と判示されたことは妥当なものと考えております」と納得した。

 「原告3社は海賊版サイトを通じた権利侵害に対する大きな抑止につなげるべく提訴いたしましたが、本訴訟は改めて海賊版サイトの問題を広く訴える契機になりました。出版社は、国内のみならず、未だに深刻な被害が生じている国外においても同様の権利行使を行うなどして、作品を守り抜くため、今後も侵害に対してあらゆる手段による対策を講じてまいります」と伝えた。

 また、ACCSも「海賊版サイトの運営に対して民事上の責任が生じることが示されたことは、同種事犯防止の観点から当然の判決であると考えます。権利者は海賊版サイトを通じて対価を全く得ることはできません。適正なサイトやアプリを通じて楽しんでいただくことが何より重要であり、改めて『海賊版サイトにアクセスしない』『海賊版サイトを利用しない』よう強く呼びかけます。今後も、会員による権利行使の支援や著作権普及を通じ、侵害抑制につながる活動を推進してまいります」と呼びかけた。

■損害賠償請求における17作品
KADOKAWA
・オーバーロード
・ケロロ軍曹
・賢者の孫
・盾の勇者の成り上がり
・トリニティセブン 7人の魔書使い
・ヒナまつり
・僕だけがいない街
・無職転生~異世界行ったら本気だす~

集英社
・キングダム
・ONE PIECE

小学館
・黄金のラフ
・カノジョは嘘を愛しすぎてる
・からくりサーカス
・ケンガンアシュラ
・黄昏流星群
・ドロヘドロ
・YAWARA!

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(2024年04月18日 16時30分 更新)

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