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12市町村 「登校に鉄道」5割超 県調査、ローカル線沿線 高利用率

通学でJR芸備線の車両に乗り込む高校生たち。岡山県の調査では鉄路が貴重な通学手段となっている実態が浮かんだ=昨年11月、新見市・野馳駅
通学でJR芸備線の車両に乗り込む高校生たち。岡山県の調査では鉄路が貴重な通学手段となっている実態が浮かんだ=昨年11月、新見市・野馳駅
 岡山県内の全27市町村の半数近くに当たる12市町村で、登校で主に鉄道を使う人の割合(鉄道利用率=平日)が5割を超えていることが、県のパーソントリップ(PT)調査で分かった。JR赤穂、芸備線といったローカル線沿線の自治体で利用率が高く、鉄路が学生たちにとって貴重な日常の足となっている実態が改めて浮かんだ。

 PT調査では登校、出勤、買い物といった外出時にそれぞれ使う交通手段を質問しており、結果の報告書に未掲載の市町村別データを山陽新聞社が集計した。登校で鉄道を主に使うと答えた人が5割を超えたのは岡山、倉敷、総社、新見、備前、瀬戸内、真庭、浅口の8市と和気、里庄、久米南、西粟倉の4町村。5割を下回った自治体のうち、玉野、笠岡、高梁、赤磐市では鉄道の割合が最も高く、合計で全体の6割を占める16市町村に上った。

 登校での鉄道利用率が最も高かったのは和気町の94・9%。備前市88・7%、瀬戸内市80・9%と続き、JR赤穂、山陽線沿線が上位を占めた。休日は備前、瀬戸内、赤磐、真庭、和気の5市町が100%だった。一方、国の「再構築協議会」で存廃を巡る議論がスタートした芸備線沿線の新見市を見ると、利用率は平日51・9%、休日72・3%となり、平日は自動車への同乗15・4%、自転車13・4%、徒歩12・0%を大きく上回った。

 県全体の平均(平日)も登校は鉄道が40・4%に上り、自転車(35・9%)自動車への同乗(7・2%)を上回って最多。鉄道利用率が出勤(6・1%)や買い物(1・2%)と比べて突出して高いことも判明した。

 県はPTに回答した登校者の多くは高校生と推察。県立高校では少子化を背景にした学校再編で通学圏が広域化しており、徒歩や自転車では難しいケースも少なくないとみられる。

 橋本成仁・岡山大学術研究院教授(公共交通計画)の話 都道府県全域を対象にしたパーソントリップ調査は全国的にもほとんど例がなく、通学(登校)に鉄道が多く使われている実態が裏付けられた意味は大きい。鉄道が「(時刻の)安定性」「高速性」といった特性で子どもたちの学ぶ権利を担保しているとも言え、公共交通の在り方を巡る議論の中で留意すべきポイントの一つになるだろう。

 岡山県のパーソントリップ調査 移動手段や人の流れを調べる目的で、初めて県内全域を対象に実施した。2022年10月に6万8千世帯に調査票を郵送し、平日と休日の行動を質問。15歳以上を対象に1世帯当たり最大3人が答える方式で有効回答は2万7395人だった。3月に県全体の結果などを掲載した報告書を取りまとめ、報告書に未掲載の詳細データについても事業者や市町村に役立ててもらおうと県のホームページで公開した。

(2024年04月09日 05時00分 更新)

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