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住民主体の発掘成果

 「ガチャガチャ」のカプセルから指先ほどの小瓶が出てきた。中にはベージュの細かい砂。添えられた紙片には「頑張って集めました かざってね」。愛らしい字で「古墳の砂」とあった▼真庭市北房地域の荒木山西塚古墳で2年計画の発掘調査が今月終了した。埋もれた地域の歴史に光を当てたいと北房文化遺産保存会が市や同志社大と協働し、県民ボランティアにも門戸を開いた前方後円墳の調査は「住民主体の発掘」と全国の注目を集めた▼墳丘だけの調査だったが、丘陵上の自然地形を利用した構造を解明し、未知の古墳の痕跡まで見つけた。十分な成功といえるだろう▼成果は考古学の領域にとどまらない。発掘現場を体験した北房中の生徒たちはその魅力を伝えようとPR動画を作り、関連グッズを考案した。発掘で出た砂を瓶に入れたカプセル玩具もアイデアの一つで、現地説明会で人気を博した▼古墳の活用法を探るフォーラムにも地元小中学生が参加した。自らの経験から、多くの人を引き付けるには体験が大切と訴え、西塚をモデルに「新しい古墳」をみんなで造ろうと夢を語り合った▼発掘をきっかけに、子どもたちが自分の地域の将来を考え始めている。これも画期的な成果だろう。地域の文化遺産を次代につなぐ新しい挑戦を、机に飾った砂の小瓶とともに見守りたい。

(2024年03月22日 08時00分 更新)

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