山陽新聞デジタル|さんデジ

ひたすらに生きる小さな命

 先日、サザンカの生け垣の中をせわしく動く野鳥がいた。メジロだ。深紅の花をつついては、また別の花へ。軽やかな身のこなしに見とれた▼花の蜜が好物で「はなすい」の異名もある。今の時季は梅の花に来る姿を目にすることも多い。「梅にウグイス」と混同されるが、明るい黄緑色の体ならメジロ。ウグイスは警戒心が強く、姿を見せることはあまりない▼そのウグイスのさえずり「ホーホケキョ」も聞かれ始めたようだ。もっとも筆者の周囲で聞こえるのは、まだ笹(ささ)鳴き。「チャッ、チャッ」と舌打ちするような声で、仲間の居場所の確認や警戒で発するとされる。素っ気ない鳴き声ながら、もうすぐ麗しい歌声を聞かせてくれるはずと期待が膨らむ▼「野鳥は最も身近な野生生物。日々、私たちの周りでドラマチックな物語を繰り広げている」。自然ガイドのくますけさんは著書「エナガの重さはワンコイン」で、野鳥観察の魅力を記す▼同著によると、普段よく見かけるスズメは実は短命で、平均寿命はたった1年3カ月。冬は寒く餌も少ない、敵に襲われるなど生き延びるための苦労は想像を絶するとか▼今日見たスズメの群れは来年には、ほとんどが別のスズメにかわっている―。そう考えれば、何げない動き一つ一つが、けなげだ。ただひたすらに生きる小さな命に背筋が伸びる。

(2024年02月22日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ