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終末時計の残り時間

 カタログなどに載っているアナログ時計の針はどれも10時8分頃を指している。その理由はいくつかある。長針と短針が重ならず、針の形が分かることや、12時の下にあるブランド名を隠してしまわないなどだ(織田一朗著「時計の針はなぜ右回りなのか」)▼長・短針の両方が上向きになるため、時計の表情が引き締まって美しく見えるといった理由もあるという。確かに針が8時20分だと、だらりとした表情にも見えてしまう▼さて、こちらの時計は危機感が募るばかりだ。人類滅亡の時を午前0時に見立て、残り時間を比喩的に示す「終末時計」である。残りは「90秒」と米国の科学誌が先月、発表した▼1947年の創設以来、最短となった昨年の判断が維持された格好だ。長期化するロシアのウクライナ侵攻や核軍縮の停滞、気候変動といった世界情勢に基づき、ノーベル賞の受賞者など科学や政策の専門家らが決めた▼終末時計は47年に残り7分で始まり、冷戦終結の91年には17分まで延びた。しかし、その後は短くなる傾向が続いている。過去最短の残り時間は、人類が“かつてない”危機に直面していることの象徴だ▼ちなみに「とき(時)」という言葉は、早く過ぎる意味の「とく(疾)」が語源との説がある。残り時間が早く過ぎてはたまらない。平穏な世界の訪れこそ、早く。

(2024年02月14日 08時00分 更新)

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