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小澤征爾さんの訃報

 オーストリアのザルツブルクと言えば、モーツァルトの生誕地として知られる。40年ほど前の学生時代に訪れ、レコード店で指揮者・小澤征爾さんの名前や写真入りのCDが前面で売られているのを見た▼当時、海外で脚光を浴びたことは知っていたが、クラシック音楽の本場で日本人が高く評価されていることに驚き、「世界のオザワ」を実感した▼1999年、東京支社の記者時代に単独インタビューする機会を得た。意外だったのは巨匠の高尚なイメージとは違う音楽への向き合い方だ。「中学、高校で音楽に採点するのは反対。でかい声で歌えばそれでいい」▼音楽の基礎的理論の楽典について「そんなの僕が見ても難しいと思うぐらいだ。音楽会に行くのも知識がなくても全然かまわない」と。人間が生き物として単純に音を楽しむ。そんな根源的な部分の大切さを強調した▼まちの「おらがオーケストラ」の価値も見いだしていた。「東京にオーケストラが集中しているのは好ましくない。全国に平均してあるべきだ」。長野県松本市での音楽祭総監督や水戸市の芸術館館長も務めた▼ボストン交響楽団などを率いて岡山県内でもたびたび公演した。「特に倉敷はいろいろ思い出があり、地域文化もよく根付いている」と語っていた。訃報が届いた。地方の音楽文化への功績を忘れない。

(2024年02月11日 08時00分 更新)

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