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裏金疑惑の議員 政倫審で説明責任果たせ

 裏金疑惑を持たれた議員は、国会で説明責任を果たさねばならない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、疑いをかけられた議員が弁明する政治倫理審査会の開催が見通せなくなっている。野党が自民の安倍派幹部や二階俊博元幹事長らの出席を求め、一度は前向きな姿勢を示した自民が対応を一転させたためである。

 政倫審はロッキード事件を契機に1985年、衆参両院に設置された。疑惑を受けた議員の政治的責任を審査する組織で、本人が申し出た場合か、委員の3分の1以上の申し立てと過半数の賛成で開催される。証人喚問と違って偽証罪に問われず、出席させる強制力もないが、国会での説明責任に関わる場となる。

 政倫審を巡り、自民の浜田靖一国対委員長が4日のNHK番組で「説明責任を果たす意味で一番いい」と発言し、実現するかとみられた。そのわずか3日後には、出席を強制できないため「なかなかハードルは高い」と態度を急変させている。「呼ばれる方の意思が非常に重要になる」と説明しているが、党内の反発を受けて後ろ向きになったのなら、自浄能力や信頼回復の本気度が問われる。

 そもそも、自民はガバナンス・コード(統治原則)と呼ばれる行動指針に「政治資金の取り扱いで疑念を持たれた議員は国民に丁寧な説明を行う」と明記している。だが、守られていないのが実態だ。

 組織的な裏金づくりが続いた最大派閥の安倍派の対応からも分かる。事件発覚後に幹部が一斉に口をつぐんだ。先月末に政治資金収支報告書を訂正した際も、報道各社が要請した派閥幹部の記者会見は「受けません」と拒否している。指針はまるで浸透していないのだろう。

 裏金を受けたとされる自民の議員が、そろって「知らなかった」と釈明する姿に国民はうんざりしている。共同通信が今月実施した世論調査では、裏金を受け取った議員が「使い道を説明する必要がある」とする回答は84%に達した。真相がうやむやのままでは、国民の間に失望が広がるだけだ。

 自身が潔白だと言うのなら正々堂々と公の場で証明すればいい。政倫審はうってつけの場だ。裏金疑惑を持たれている議員は自ら手を挙げ、政倫審に出席して洗いざらいを説明せねばならない。

 党総裁の岸田文雄首相は「政治の信頼回復に向け先頭に立つ」と繰り返しているが、言葉だけが躍っている印象が否めない。

 首相は今国会の衆院予算委員会で、全容解明について「最も事情を知る本人の説明責任が第一だ。党としても促していく」とアピールした。ただ肝心の説明を「促す」では主体性を欠く。党総裁として「説明させる」と指示するくらいの強い指導力を発揮しなければ局面を変える糸口はつかめないと自覚すべきだ。

(2024年02月10日 08時00分 更新)

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