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速さと正確性 安全運転身に付く 本紙記者「オートテスト」体験

パイロンをかわして走行する参加者
パイロンをかわして走行する参加者
車庫入れのハンドル操作に集中する記者
車庫入れのハンドル操作に集中する記者
 障害物や車庫入れといった課題が設けられたコースで速さと正確性を競う「オートテスト」という新しいモータースポーツがある。ヘルメットや手袋など特殊な装備が不要でマイカーで参加できる手軽さが人気を呼んでいるらしい。20日に岡山市内で初めて大会が開かれると聞き、記者が体験してみた。

 英国発祥の競技。モータースポーツの裾野を広げようと2015年に日本自動車連盟(JAF)が国内に導入し、JAF中国本部は16年から大会を開いている。時速50キロ以下になるようコース設定し、速さより正確性を重視。パイロンに接触したり、枠内に駐車できなかったりするとペナルティーとしてタイムが加算される。

 大会は全国各地から19~69歳の54人がエントリー。普通車、軽自動車とそれぞれのオートマチック(AT)車、マニュアル車、初心者の5クラスで、全長約300メートルのコースを2回走ってベストタイムで争う。

 加速時の激しいエンジン音や切り返しの鋭いタイヤ音が響き、走りやハンドルさばきを実況する放送にムードが盛り上がる。いよいよATの軽自動車に乗った記者の番が来た。

 フラッグの合図でアクセルを踏んで発進する。まずはパイロンの間を抜け、地面に引かれたラインを前輪と後輪でまたいで一時停止。再加速してパイロンで作られたコの字形のガレージに前向き駐車した後、後退して切り返す。次に別のガレージにバック駐車し、並んだパイロンの隙間を縫うように抜けゴールした。

 接触することなく無事にフィニッシュを迎え、タイムは約1分。想像以上に次から次に課題が迫り、一瞬で終わった気がした。それでも短時間でシフトチェンジを繰り返して軽快に車を操るのは癖になりそうな楽しさだ。ただ速い人は40秒ほど。「順路を間違えたくない」「曲がりきれなかったらどうしよう」とスピードを上げることができなかった。「もう少し勝負しても良かった」。後悔とリベンジしたい気持ちが湧いた。

 他の参加者はどうだったのだろう。職場の同僚に誘われて初参加した会社員の女性(59)=倉敷市=は「特別な準備が要らないので挑戦しやすい。こんなに緊張したのは何年ぶりだろう。はまりそう」と声を弾ませた。コースが短いため一つの操作ミスが結果に大きく関わる。シンプルながら高い競技性に「何度やっても面白い」と語る人も多かった。

 熟練者からはこんな声も。競技歴8年の自営業の男性(50)=倉敷市=は「走れば走るほど荒い運転をすると危ないということが分かり、普段の運転は逆に慎重になる」と話す。

 いくらスピードが出づらいとはいえ、モータースポーツと安全運転は対極にも感じるが、JAF岡山支部の前田信明事業課長は「スピードを上げて正確に運転するには正しい姿勢や操作が不可欠。オートテストは楽しみながら安全運転の技術を身に付けられる」と教えてくれた。

 日常生活の一部になってしまっていた車の運転が、大会で大勢に注目され、評価されるのは新鮮な感覚だった。JAF中国本部管内の次回開催は3月3日、広島県安芸高田市。興味のある方は自慢のマイカーで参戦してみては。

(2024年01月27日 16時38分 更新)

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