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ウクライナと日本つなぐ存在に 避難のジグノフさん 岡山生活1年

受験勉強の合間、クラスメートと会話するジグノフさん(右)=11日、岡山市の学芸館高
受験勉強の合間、クラスメートと会話するジグノフさん(右)=11日、岡山市の学芸館高
 ロシアの侵攻が続くウクライナから岡山県内に単身で避難し、学芸館高(岡山市)に通う高校生ジグノフ・イェホールさん(18)は岡山で暮らし始めて16日で1年となる。故郷の惨状に胸を痛めながらも勉学に励み、教育の研究者になるという夢ができた。今は日本の大学への進学を目指しており「いつかは母国に戻って日本の優れた教育を広めたい」と語る。

 「友達と話をするのに困らなくなったけど、今も漢字は難しい」。期末テストを終えた11日、ジグノフさんは教室でクラスメートと復習に取り組んでいた。

 これまでで一番の思い出は9月の文化祭。クラスでウクライナの伝統料理を販売し、人道支援のための募金活動も行った。「岡山での学校生活は本当に楽しい。でも、ウクライナを忘れたことは一度もない」

家族案じながら


 侵攻が始まった昨年2月、ジグノフさんはウクライナの首都キーウ(キエフ)で父親(66)と2人で暮らしていた。銃声や戦闘機のエンジン音が近くに聞こえ、自宅から立ち上る黒煙が見えたこともあった。

 安全に勉強できる環境を日本国内に求めていた昨秋、インターネット上で留学生の受け入れが可能な学校を探し、学芸館高を見つけた。岡山県によると、ウクライナから県内への避難民は現在、幼児から70代までの10世帯13人。ジグノフさんは唯一の高校生だ。

 来岡後も母国を案じてニュースを毎日チェックする一方、戦況は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。「故郷での戦争が当たり前のようになっていることが悲しい」。家族とは密に連絡を取って安全を確かめている。

 ロシアはウクライナの領土の約2割を占領しているのに対し、ウクライナは全土奪還を掲げる。「もちろん戦争は早く終わってほしい。でも、領土を占領されたままなら、本当の平和は訪れないと思う」と複雑な胸中を吐露する。

募金活動に参加


 岡山での生活に慣れた頃から、県内在住のウクライナ出身者と共に支援を求める募金活動に積極的に参加するようになった。「ウクライナに関心を持ち続けてほしい」との思いからだ。

 実際、戦争の長期化の影響からか、募金に協力する人が減っているという。県が設けた募金箱に寄せられたのは2023年は現時点で計約35万円。22年(計約76万円)から半減している。

 「ウクライナの学校にはない文化祭や体育祭は仲間との団結力を育む優れた学びだと思う。日本の教育を研究してみたい」。学芸館高の受け入れが来年3月末で終了するジグノフさんは今、大学進学を目指して受験勉強に励んでいる。「将来、ウクライナと日本の友好関係をつなぐ存在になりたい」という夢を描きながら。

(2023年12月13日 21時20分 更新)

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