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店舗全焼の悲劇乗り越えバー再開 岡山の奥埜さん、ワイン魅力紹介

客との会話を楽しみつつ、お薦めのワインを注ぐ奥埜さん
客との会話を楽しみつつ、お薦めのワインを注ぐ奥埜さん
再開した店が入居するビル。ピンク色のライトが目印になっている
再開した店が入居するビル。ピンク色のライトが目印になっている
 2021年12月、岡山市北区表町の繁華街で起きた大規模火災からもうすぐ2年がたつ。奥埜翔夢さん(27)=同市北区=は被害に遭った一人。夢だったワインバーのオープン当日に店を失った悲劇を乗り越え、別の場所で再開した店でこだわりのワインとお好み焼きの魅力を伝えている。

 ピンク色のライトに照らされた入り口の扉を開けるとカウンター越しに奥埜さんが迎える。客にどんな味がいいか尋ね、お薦めのワインをグラスに注ぐ。気さくな雰囲気でナチュラルワインとおつまみが味わえる店だ。

 倉敷市出身で、広島のお好み焼き店で働いた後、地元で飲食店を開こうとしていた。ワインは得意ではなかったが、たまたま飲んだナチュラルワインに「こんなに飲みやすくておいしいんだ」と感動。ナチュラルワインとお好み焼きの店を出そうと決め、開店までに1年かけ資金約800万円を準備した。

 火災が起きた13日午後4時半ごろは、開店に向け仕込みをしていた。夢だった店のオープンまで1時間半という時、別の店舗から火の手が上がっているのを目撃。ビルや飲食店など8棟が焼け、奥埜さんが集めていたワイン200本や設備はほぼ全て燃えた。

 身一つで逃げ出したが「火災後1週間は何も考えられなかった」。でも、プレオープンに来てくれたお客さんや接客の楽しさが忘れられず、もう一度やり直そうと決心。資金をクラウドファンディングで募ったところ766万円が集まり、22年9月、北区野田屋町のビル1階で開業した。

 再スタートから1年余りが過ぎ、今では県内外からワイン好きの人が集う場所になった。地元の倉敷や欧州のナチュラルワインを、特徴を説明しながら提供する。好きな魚について学びたいと鮮魚店で修業し、旬の魚を使った料理も出している。

 「たくさんの人の支えがあってここまで進んでこられた。特に若い人がワインを好きになってくれたらうれしいし、岡山がワインの産地であることもアピールしたい」と話している。

 ◇     

 店名は好きなCHAGE and ASKAの曲から取った「LOVE SONG」。店内で流れるBGMも、山下達郎など1980年代のポップスが中心。グラスワインは800円から。軽めの食事は千円前後で月ごとにメニューが変わる。営業時間などはインスタグラム(love_________song)。

(2023年12月02日 16時53分 更新)

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