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旧脇本陣隣接の水路護岸補強へ 矢掛町、石崩さぬ工法で試験施工

石積み護岸の耐震補強工事を視察する西岡調査官(右)と説明する橋本教授(右から3人目)
石積み護岸の耐震補強工事を視察する西岡調査官(右)と説明する橋本教授(右から3人目)
 岡山県矢掛町は、町中心部の重要伝統的建造物群保存地区に隣接する水路で、劣化した石積み護岸の耐震補強工事を計画している。江戸中期以降に築かれたとされ、工事では石を崩さない工法で補強を施す考え。本格実施に向け、部分的に試験施工して工法の効果を検証する取り組みを始めた。

 水路(延長111メートル、深さ約2メートル)は自然石を組んだ「野面積み」で、旧矢掛脇本陣高草家住宅(国重要文化財、同町矢掛)の北側にある。現状変更が規制される同地区には含まれず、コンクリート壁への改修も可能だが、一帯の町並みに配慮して外観を維持する。

 工法は文化財石垣・石積擁壁補強技術協会(東京)の会長を務める橋本隆雄・国士舘大教授に相談し、教授が考案した。石の一部をくりぬいて穴(最大直径9センチ)を開け、1メートルほどの鋼材を水平方向に差し込むと同時に、土手側の地表から2・5メートルほどの鋼材を垂直方向に打ち、土中で接続して強度を高める。

 石の穴には、くりぬいた元の石で“ふた”をし、跡が目立たないようにするという。

 試験施工は今月中旬に水路の一角で着工。来月中旬に強度を確認し、効果が認められれば今後、約1メートル間隔で同様の補強を施す計画。試験施工の事業費は約120万円。本格工事は本年度末の完了を目指すとしている。

 20日には橋本教授の招きで、文化庁の西岡聡調査官が視察に訪れ「全国では熊本城など城の石垣の耐震対策が急務となっている。石を積み直すことなく強度が増すなら意義が大きい」と話した。

(2023年09月28日 16時42分 更新)

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