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「復興の旗印に」総社で営農再開 豪雨被災、5ヘクタールを桃畑へ

4月に植えた苗木を前に「しっかりと桃を作って期待に応えたい」と話す(左から)吉富さん、本澤さん、岡田さん
4月に植えた苗木を前に「しっかりと桃を作って期待に応えたい」と話す(左から)吉富さん、本澤さん、岡田さん
 西日本豪雨で被災した総社市北部、下倉地区の農地で、5年ぶりに営農が再開された。岡山県による改良復旧事業が完了したことを受け、同市の「総社もも生産組合」(13戸)に所属する若手農家3人が桃の苗木を定植した。収穫は3年後の予定。3人は「高品質な桃を育てて送り出し、復興の旗印にしたい」と意気込んでいる。

 吉富政宏さん(42)▽本澤康雄さん(39)▽岡田幸久さん(33)―の3人。いずれも市中心部や西部で1ヘクタールに満たない桃畑を管理し、規模拡大に意欲を見せる担い手たちだ。

 3人は昨年11月、県農地中間管理機構(農地バンク)を通じ、それぞれ地権者から農地を賃借。農地の面積は合計5ヘクタール。今年4月、「清水白桃」や「白麗」など、思い思いの品種の苗木を植え付けた。

 下倉地区では5年前、豪雨で高梁川の堤防2カ所が決壊し、広範囲で浸水被害が発生した。県は2018年度から、決壊地点周辺の1・7キロで堤防のかさ上げや増強などを行う改良復旧工事を実施してきた。

 3人が桃畑としたのは決壊地点にほど近い場所。被災前は地元農家がコメや野菜を栽培していたという。復旧工事中は盛り土などの資材置き場として使われ、完了後はあぜを築いて被災前の状態に戻す「原形復旧」が予定されていた。

 だが、農機具の浸水被害や高齢化などで地元農家の意欲が低下。耕作放棄も危ぶまれたが、農地バンクが市と協力して担い手を探したところ、総社もも生産組合が手を挙げた。県は原形復旧ではなく、桃畑として使いやすいよう平地に整地。昨年10月、地権者に返還していた。

 地元の人から「桃の花が咲くのが楽しみ」などと声をかけられることもあるという3人は「何代にもわたり受け継がれてきた農地。しっかりと桃を作って期待に応え、受け入れてくれた恩返しをしたい」と話す。

 組合長の秋山陽太郎さん(43)は新しく誕生した桃畑に、こう期待する。「この小さな苗を復興のともしびに、いずれ地域を明るく照らしたい。組合にとっても、規模拡大で品種の多様化や安定生産が図れ、総社の桃の存在感を一層高めてくれるはずだ」

(2023年07月05日 15時23分 更新)

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