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国内最古のカイギュウ化石と解明 倉敷芸科大教授、中学時代に発見

加藤教授が発見、研究したカイギュウの化石(左)と化石の位置(右上)、大きさ(右下)=画像提供 西海市教育委員会・福井県立恐竜博物館
加藤教授が発見、研究したカイギュウの化石(左)と化石の位置(右上)、大きさ(右下)=画像提供 西海市教育委員会・福井県立恐竜博物館
加藤敬史教授
加藤敬史教授
 倉敷芸術科学大(倉敷市連島町西之浦)の加藤敬史教授(56)=古生物学=らの研究グループは、1980年に長崎県で見つかった化石が太平洋に生息した海生哺乳類・カイギュウの最古の事例であると突き止めた。貴重な資料となった化石は、当時中学生だった加藤教授が発見したもの。約40年の時を経て、長年正体不明だった謎を自らの手で解き明かした。

 カイギュウはマナティー科とジュゴン科に分類される。マナティーはアフリカ西部や中米などの海や河川に生息。ジュゴンは東アフリカからインド洋、西太平洋にかけ、熱帯や亜熱帯の海に分布する。国内では沖縄県に棲むが、生息地が広がった経路は十分には分かっていないという。

 長崎県出身の加藤教授は幼少期に鉱物採集に夢中になり、中学に入ると「友達と競うように化石を探していた」。カイギュウは、中学1年の時に同県崎戸町(現西海市)の海岸で発見。長さと幅約80センチの砂岩に複数の骨が残っていた。当時は大きさから「クジラでは」と言われていたが、正体は分からないままだった。

 所有する西海市に専門の学芸員が配置されたのを機に、2016年から研究がスタート。発見者であり、専門の道に進んだ加藤教授にも協力の依頼があった。発見当時の気持ちは「あまり覚えていなかった」と言うが、骨の断面の観察や地層などの調査を共同で実施。「古第三紀」に当たる約3300万年前のカイギュウの化石と判断した。

 カイギュウ化石に関しては、国内ではこれまで1982年に北九州市で見つかった約2800万年前のものが最古。今回の発見は、さらに古い時期にインド洋から太平洋へ進出していたことを示している。カイギュウの移動の歴史は謎が多く、解明につながる成果という。

 化石は現在、長崎市恐竜博物館で公開中(6月30日まで)。加藤教授は「重要な化石と分かり、これからより多くの疑問を明らかにしたい」と話す。

 カイギュウ 水中の植物を食べる哺乳類。後ろ足は無く、前足がヒレになり尾びれもある。アフリカが起源と考えられ、最も古いもので約5000万年前の化石が見つかっている。大西洋を遊泳して進化したとされ、太平洋や東南アジアで古第三紀の化石の記録はほとんどない。

(2023年05月17日 19時05分 更新)

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