政府機関の移転 文化庁で終わらせるな
やっと具体的な成果が表れた。文化庁がきのう、東京・霞が関の本庁を京都市に移転して業務を開始した。地方創生政策の目玉として「政府機関の地方移転」が2014年に閣議決定されて8年余り。中央省庁の地方への移転は初めてだ。
都倉俊一長官ら約70人体制でスタートし、5月15日から本格稼働する。全9課のうち庁全体の総合調整を担う政策課や世界遺産を担当する文化資源活用課など5課が京都に移り、著作権課など4課が東京に残る。最終的には全職員の7割に当たる約390人が京都を拠点にするという。
移転を機に、東京中心の政策立案から脱却するとともに、地方文化の発信強化にもつなげてもらいたい。
政府だけでなく企業などの経済活動、高等教育や研究、芸術や文化など多くの分野の拠点を東京が独占しているのを改め、地方が得意分野を担う形に変えることは重要だ。
もともと政府機関の地方移転は、東京一極集中の是正やそれに伴う地域活性化のために政府が取り組み始めた。民間企業の本社機能の地方移転を促すために自ら範を示す狙いもあった。地方から移転案を募り、岡山県も市町村からの要望に沿い当時の理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター(横浜市)など9機関の誘致を提案した。
しかし、省庁の強い抵抗により、文化庁のほかは、消費者庁や総務省統計局が本体を東京に残したまま一部業務を移すなどのわずかな成果にとどまる。現状は「掛け声倒れ」と言えるだろう。
昨年末に閣議決定された地域活性化の新たな5カ年計画「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、「政府関係機関の地方移転の推進」との項目が掲げられている。具体的には「有識者からの意見などを踏まえ、23年度中に総括的な評価を行い、必要な対応を行う」とする。表現が力強さに欠け、岸田政権の「本気度」は伝わってこない。
文化庁などの移転を評価するため、「地方に移転しても機能を保持できたか」「コスト増や組織の肥大化につながらなかったか」―などの効果を検証するという。
懸念されるのは、こうした検証が、さらなる移転を進めないための理由付けにされることだ。東京に中央省庁などが集中する現実がある中で、移転した機関のみの合理性や効率性を評価するのは無理がある。
あくまでも目的は、世界でも異常な首都圏への一極集中を是正し、分散型の国土構造に変えることである。文化庁のケースがそうであったように、目先の組織の論理は排除し、まず政治が「移転ありき」で強い意志を示した上で、適切な組織形態を考えるのが筋だ。政府は文化庁の京都移転でお茶を濁して終わるのではなく、さらなる移転を進めねばならない。地方からも声を強めていきたい。
都倉俊一長官ら約70人体制でスタートし、5月15日から本格稼働する。全9課のうち庁全体の総合調整を担う政策課や世界遺産を担当する文化資源活用課など5課が京都に移り、著作権課など4課が東京に残る。最終的には全職員の7割に当たる約390人が京都を拠点にするという。
移転を機に、東京中心の政策立案から脱却するとともに、地方文化の発信強化にもつなげてもらいたい。
政府だけでなく企業などの経済活動、高等教育や研究、芸術や文化など多くの分野の拠点を東京が独占しているのを改め、地方が得意分野を担う形に変えることは重要だ。
もともと政府機関の地方移転は、東京一極集中の是正やそれに伴う地域活性化のために政府が取り組み始めた。民間企業の本社機能の地方移転を促すために自ら範を示す狙いもあった。地方から移転案を募り、岡山県も市町村からの要望に沿い当時の理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター(横浜市)など9機関の誘致を提案した。
しかし、省庁の強い抵抗により、文化庁のほかは、消費者庁や総務省統計局が本体を東京に残したまま一部業務を移すなどのわずかな成果にとどまる。現状は「掛け声倒れ」と言えるだろう。
昨年末に閣議決定された地域活性化の新たな5カ年計画「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、「政府関係機関の地方移転の推進」との項目が掲げられている。具体的には「有識者からの意見などを踏まえ、23年度中に総括的な評価を行い、必要な対応を行う」とする。表現が力強さに欠け、岸田政権の「本気度」は伝わってこない。
文化庁などの移転を評価するため、「地方に移転しても機能を保持できたか」「コスト増や組織の肥大化につながらなかったか」―などの効果を検証するという。
懸念されるのは、こうした検証が、さらなる移転を進めないための理由付けにされることだ。東京に中央省庁などが集中する現実がある中で、移転した機関のみの合理性や効率性を評価するのは無理がある。
あくまでも目的は、世界でも異常な首都圏への一極集中を是正し、分散型の国土構造に変えることである。文化庁のケースがそうであったように、目先の組織の論理は排除し、まず政治が「移転ありき」で強い意志を示した上で、適切な組織形態を考えるのが筋だ。政府は文化庁の京都移転でお茶を濁して終わるのではなく、さらなる移転を進めねばならない。地方からも声を強めていきたい。
(2023年03月28日 08時00分 更新)