倉敷の世界王者
ユーリ阿久井政悟
「地方でも世界王者になれる。何より会長や先輩がやってきたことが間違いじゃないと証明したかった」。マッチメークが難航するなど地方のハンディにも負けず、古里でひたむきにボクシングに打ち込んできた。デビューから10年、守安竜也会長と二人三脚で歩んできた夢がついに結実した。
父の一彦さんは1987年設立の倉敷守安のプロ1号。叔父の赤沢貴之さんも日本タイトルに挑戦した経験を持つ。父の現役時代の記憶はほとんどないというが、根底にはボクサー一家のDNAが流れているのだろう。お年玉でグローブを買ったのは倉敷・中庄小5年の時。父から基本の手ほどきを受け、家の前でのスパーリングごっこやミット打ちが遊びになった。小学校の卒業式では級友たちの前で将来の夢を「プロボクサー」と発表した。
環太平洋大在学中の2014年にプロデビュー。2019年10月27日、浅口市で行われた日本フライ級王座決定戦はわずか136秒の鮮烈な戴冠となった。試合開始直後から攻勢に出てペースを握ると、必殺の右ストレートなどで3度のダウンを奪い、一気に勝負を決めた。プロ17戦目の当時24歳。「岡山で取れて良かった」。ずしりと重いベルトを巻き、ユーリ阿久井政悟はファンの喝采(かっさい)を浴びた。
日本タイトル奪取後も困難を乗り越えてきた。2020年3月に予定していた初防衛戦は、新型コロナウイルスの影響で直前に延期が決定。結局、開催は半年以上宙に浮いた。以降も試合間隔が空き、先の見通せない状況がしばらく続いた。
「都会のジムならもっと早くチャンスが巡ってきたかもしれない。でも同じような日々の繰り返しの中でちゃんと身になる練習をやってきた」。鍛錬を怠らず3度の防衛を果たし、世界ボクシング協会(WBA)のランキングは1位に上昇。2023年1月に日本王座を返上した阿久井に9月、ついに吉報が舞い込む。6連続防衛中の無敗の王者との決戦は、当初予定の11月から延期されたが、その間、攻略イメージを練り上げて1月23日を迎えた。
倉敷守安のプロだった父、叔父の影響で倉敷北中2年で入門。翠松高に進み、アマでは2度の国体入賞などの成績を残した。プロ2年目の2015年に岡山県内のジム所属選手では初となる全日本新人王(ライトフライ級)を獲得。リングネームのユーリは元世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者の勇利アルバチャコフにちなむ。163センチ。
22戦19勝(11KO)2敗1分け
2014年4月20日
末吉 悠生(千里馬神戸)◯判定
9月14日
武藤 通隆(勝輝)◯判定
11月9日
荻堂 盛太(平仲BS)△引き分け
15年7月19日
菖蒲 瑠香(渥美)◯1回TKO
9月27日
香美の子岡村ケントキッド(六島)◯1回KO
11月15日
大城 信博(琉球)◯判定
12月20日
細谷 大希(角海老宝石)◯判定 【全日本ライトフライ級新人王獲得】
16年4月3日
山地 秀明(広島拳闘会)◯1回KO
10月2日
内野々大叶(ウエスタン延岡)◯3回TKO
12月3日
大野 兼資(帝拳)◯1回TKO
17年4月16日
スターボール・トーシリトゥーム(タイ)◯1回KO
5月16日
大保 龍斗(横浜さくら)◯1回TKO
8月23日
中谷 潤人(M.T)●6回TKO
18年4月8日
矢吹 正道(緑)◯1回TKO
10月28日
ジェイセべー・アブシード(フィリピン)●8回TKO
19年4月28日
湊 義生(JM加古川)◯1回TKO
10月27日
小坂 駿(真正)◯1回TKO 【日本フライ級王座獲得】
20年10月18日
藤北 誠也(三迫)◯判定【防衛(1)】
21年7月21日
桑原 拓(大橋)◯10回TKO【防衛(2)】
22年2月27日
粉川 拓也(角海老宝石)◯判定【防衛(3)】
23年2月4日
ジェイソン・バイソン(フィリピン)◯判定
24年1月23日
アルテム・ダラキアン(ウクライナ)◯判定 【WBAフライ級王座獲得】