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「デコ活」を知っていますか

 「人口に膾(かい)炙(しゃ)する」との故事成語がある。詩や名句などが人々の話題に上り、広く世間に知れ渡るという意味だ▼膾は魚や獣の生肉を細く切って味付けした料理、炙は火であぶった肉のこと。誰の口にもおいしく感じられることが言葉の由来とされる▼こちらは人口に膾炙しているとは言えない言葉だ。「デコ活」である。脱炭素社会を目指して政府が呼びかけている国民運動の愛称という。環境省が全国の6500人にネットで2月に実施した調査によると、デコ活を「聞いたことがない」「分からない」との回答が74%に上った▼英語の脱炭素「デカーボナイゼーション」と「エコ」を組み合わせた造語だ。正式名称の「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」は長過ぎるとの指摘から愛称を募り、昨夏選ばれた▼デコ活のウェブサイトには具体的な実践例が並ぶ。今年も各所で始まったクールビズをはじめ、電灯のLED(発光ダイオード)化、食品ロス削減、ごみの分別・再利用、地元産の旬の食材を積極的に選ぶ…。皮肉にもデコ活の言葉は知らなくても、既に広く取り組まれている活動は少なくない▼つまりは脱炭素に向けて、一人一人が身近でできる活動を無理せず続けるのが肝要ということだろう。すなわち「ちりも積もれば山となる」。これなら誰もが知っている。

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