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高齢1人暮らし 住まいの確保 支援手厚く

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が、2050年には1人暮らしの高齢者が1084万世帯に急増し、全世帯の20・6%を占めるとの将来推計を先に発表した。未婚率の高い団塊ジュニア世代の高齢化が背景にある。

 入院、介護施設への入所時などの身元保証や遺骨の扱いといった課題が既に顕在化している。さらに、賃貸住宅へ円滑に入居できる環境整備を進めるための関連法改正案が今国会で審議されている。

 賃貸住宅の大家を対象にした21年度の国土交通省の調査では、7割が「高齢者の入居に拒否感がある」と答えた。国交省は、孤独死や近隣住民とのトラブル、家賃の支払いなどへの不安が背景にあるとみている。住まい確保の支援を手厚くする必要がある。

 賃貸住宅の契約が難航しがちな高齢者らを対象に、住宅情報の提供や、入居後の見守りなどを行うのが、都道府県の指定する「居住支援法人」だ。岡山県内では3月末時点で13法人ある。

 その一つ、「NPO法人おかやまUFE(ウーフェ)」(岡山市北区東古松)は、医師や弁護士、精神保健福祉士、宅地建物取引士ら専門家でつくり、昨年度の相談は空き家の利活用を含めて149件に上った。

 もともとは障害や病気のある人に医療、福祉、居住、就労などの支援を行うため、15年に設立された。支援を求めるのは高齢者に加えて、精神障害者や生活困窮者が多い。

 不動産会社などと協力して物件を探し、昨年度は20人余が入居にこぎつけた。とはいえ、入居時には敷金、礼金など初期費用と「緊急連絡人」の確保が課題になるという。

 その解決に期待されるのが、国会で審議中の法改正案である。支援団体が見守りなど入居中のサポートをする賃貸住宅を自治体が認定する制度を新設し、要配慮者と大家の双方が安心して貸し借りできるようにする。

 賃貸住宅で亡くなった人の遺品を、家主に代わって居住支援法人が処分できる仕組みも推進する。保証人などの代わりとなる家賃債務保証業者について、要配慮者が利用しやすい業者を国が認定する。低所得でも利用できる仕組みが求められる。

 孤独や孤立の問題は世代を問わず誰でも起こり得る。人間関係の希薄化が指摘される中、人とのつながりをどうつくり出すかも課題となる。

 おかやまUFEは誰もが気軽に集まれる場所として「よるカフェ『うてんて』」を毎週日曜夜に開くほか、弁当の配布など入居後の支援に力を入れている。こうした1人暮らしの高齢者らを見守る態勢の強化が急がれる。

 そのために自治体や国が支援に主導的な役割を果たすとともに、NPOなど民間団体の協力が欠かせない。

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