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子どもの視点

 力ではとうていかなわない上司が「早くしろ」と威圧してくる。仕事に必要だからと20キロ近い荷物を背負って通勤せねばならない。そんな毎日だったらやりきれないだろう▼だが、子どもの世界を大人のサイズに置き換えると、それが現実だという。東京・北青山に民間の研究チームが開設した「こどもの視点カフェ」で体験できる。本紙くらし面の記事で知り、訪ねてみた▼1歳ぐらいの子どもからすれば大人は4メートルの巨人。VR(仮想現実)ゴーグル越しに叱られると恐怖でしかない。小学1年生の平均値を基に作られた「大人ランドセル」は18・9キロもの重さである。一人では背負うことができなかった▼子どもがどれほど小さな存在か。私たちがいかに大人の感覚を前提に接しているか。痛感させられる。わが子育てを顧みても、無意識のうちに自分の物差しで「早く」「きちんと」と追い立てていたことに気がつく▼児童虐待の悲しいニュースが後を絶たない。昨年、全国の警察が虐待の疑いで児童相談所に通告した18歳未満の子どもは12万2806人。事件としての摘発は2385件に上った。ともに過去最多である▼子どもの立場に立ってみる。子どもの目線で考える。それができていれば防げたケースがあったかもしれない。子どもが一人の人間として大切にされる社会でありたい。

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