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外国人育成就労 日本語習得の環境整備を

 技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就労」創設に向けた技能実習適正化法と入管難民法の改正案が国会で審議入りした。技能実習は発展途上国に技術を伝える国際貢献を掲げるが、育成就労では目的を「外国人材の育成・確保」と明記する。成立すれば、2027年にも新制度が始まる。

 少子高齢化が進む中、働く人手を確保できれば、社会保障の充実にも貢献することになる。だが、日本経済が伸び悩む一方、実習生を送り出すアジア各国は成長を続けており、働き先として日本の魅力は薄れていると言わざるを得ない。生活を含めた環境を整えることが欠かせない。

 改正案の大きな柱は、同じ業務分野で職場を変える「転籍」を認めることだ。技能実習は原則転籍が認められず、劣悪な環境から逃れようと失踪者が続出したためである。

 制度を見直す政府有識者会議は昨秋、原則1年超の就労で転籍を認めることをまとめた。だが、条件の良い都市部へ人材が流出する懸念が広がり、改正案は当面の間、分野ごとに最長2年まで転籍を制限できるとした。働く環境の改善には、受け入れ企業が労働関係法などを学ぶ機会を設けて、人権意識を高めることも必要だ。

 厚生労働省によると、外国人労働者は昨年10月末時点で過去最多の204万人に上った。岡山県は2万4052人で、このうち9521人が技能実習、その他は即戦力の外国人を受け入れる「特定技能」、留学生のアルバイトなどとなっている。

 労働や生活環境を整えるため、特に求められるのは日本語を学べる場だ。外国人労働者に詳しい行政書士の岡崎博之さん=岡山市=は「技能実習の大きな問題は日本語があまり分からなくても実習生になれること。そのために職場などでトラブルが起こり、本人のストレスにもなっていることが多い」と指摘する。

 日本語教育推進法は外国人への日本語教育を国や自治体の責務としている。受け入れ企業と、技能実習の監理団体に代わって新たに設けられる「監理支援機関」はもちろん、国、自治体も地域での日本語教室の開催や住民との交流に努めてほしい。

 特定技能の受け入れ対象についても、政府は先月、バスやタクシー、トラックの運転手といった自動車運送業、車両製造、軌道整備、運転士、車掌、駅員らの鉄道業などを加えることを閣議決定した。

 一方で永住者の増加が予測されることを見据え、今回の改正案で、支払い能力があるのに税金や社会保険料を納めないなど故意に公的義務を果たさない場合、永住許可を取り消せるように見直す。

 支援者らからは「手続きのミスなどで取り消されることも起きかねず、立場が不安定になる」と反対の声が出ている。実情を踏まえ、国会で議論を深めてもらいたい。

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