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美術家太田さんが奈義で記念展 津山で画業30年 歩み紹介

長年集めた植物の種子を標本のように仕立てた作品と並ぶ太田さん
長年集めた植物の種子を標本のように仕立てた作品と並ぶ太田さん
 津山市北園町の美術家太田三郎さん(73)が東京から市内に活動拠点を移して丸30年となるのを記念した個展が、奈義町現代美術館(同町豊沢)で開かれている。今年開館30周年を迎えた美術館とのコラボレーション企画。長年集めた植物の種子を標本のような作品にしたシリーズなどを展観し、画業の歩みを紹介している。

 太田さんは最寄りの郵便局に毎日通って集めた切手をモチーフにした「Date(デート) Stamps(スタンプス)」などで国際的に知られ、戦争や虐待といった社会問題をテーマにした作品もある。1994年から妻の故郷の津山市で活動し、2016年には山陽新聞賞(文化功労)を受賞している。

 今回は、自宅周辺や旅先で11~20年に毎日収集した植物の種子をビニール袋に詰めて一つの作品として表現した「Seed(シード) Project(プロジェクト) 2011 to(トゥー) 2020」など7シリーズを展示。「Seed―」は市内や東京で採取したイタドリやサルスベリのほか、友人から贈られたメロン、妻の実家にあるツワブキの種子が壁一面に並び、太田さんの10年間の記録になっている。

 仏具に使われるジュズダマを鎖状に連ねた近作は、人間を救う宗教が信者や家族を傷つける可能性もあるとのメッセージがこもる。1945年の原爆投下で「75年は草木も生えない」と言われた広島市の爆心地周辺で2020年に集めた種子を切手にし、核廃絶を訴えた作品も目を引く。

 太田さんは「種子集めは自分がいつどこに存在したかの証し。時の流れを感じてほしい。自然素材を使った表現の豊かさにも注目して」と話している。

 6月16日まで。午前9時半~午後5時(入館は同4時半まで)。月曜休館。一般・大学生200円など。5月4日同2時半から太田さんのトークイベントがある。問い合わせは美術館(0868―36―5811)。

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