山陽新聞デジタル|さんデジ

事故相次ぐ科学実験 準備不足か? 専門家「危険性リストアップを」

圧縮発火装置の注意点を説明する高原さん
圧縮発火装置の注意点を説明する高原さん

 北海道旭川市の科学館で行われた科学ショーで20日、アクリル製の筒が破裂する事故があり、小学生を含む観覧客4人がけがをした。2月には高知市内の四つの小学校で液体窒素を使った実験でも、児童合わせて33人が軽い凍傷などのけがを負った。子どもたちに驚きや発見を与えてくれる科学実験だが、火や薬品が使われることもあり、常に安全性を考えなければならない。専門家は「実験前に必ずリスクを洗い出し、予備実験をするなど、十分な準備をしてほしい」と警鐘を鳴らす。

 岡山理科大学(岡山市)教授で、科学ボランティアセンター長の高原周一さんは、地域で科学実験をする学生ボランティアの指導を行っている。「学生にはいつもまず実験前に、どんな危険性があるのかリストアップするように伝え、それを回避する方法も考えてもらっている」と話す。また「どの実験にも典型的なリスクがある。あらかじめ知識を入れておくようにとも伝えている」と言う。

 旭川市の科学ショーで行われたのは「圧縮発火装置」を使った実験。密閉した筒の中の空気を急激に圧縮することで温度が上昇し、ティッシュペーパーに着火する仕組みだった。

 1回目の実験でうまく火が付かなかったため、2回目は火薬の一種・フラッシュコットンを使用。しかも必要以上の量だったという。高原さんは「まずこの実験でフラッシュコットンを使うことは考えられない。市販の実験キットを使ったのであれば、説明書に書いてある素材や量を使用しないと、筒の耐圧性能の範囲を超えてしまう」と指摘する。そして「もし1回目の実験でうまく着火せず、別の素材を使うことを思い浮かんだとしても、必ず観客の前で披露する前に、予備実験をしなければならない」と語る。

置いているのは普通の綿。少量で良いという
置いているのは普通の綿。少量で良いという

 2月の高知市の小学校で行われた実験は、液体窒素を体育館の床にまき、気化する様子を観察するというものだった。実験前にテストを行ったものの、本番の体育館ではなく、カーペットの上で実施したという。高原さんは「私もこの実験をしたことがあるが、屋外でしかしたことはない」とし、「予備実験は同じ条件で行わなければいけない。液体窒素の広がり方も異なってくる」と言う。

 高原さんは「子どもたちに科学の楽しさを伝えるための実験やショー。子どもたちはもちろん、自らの身を守るためにも、しっかり安全に配慮してほしい」と話した。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP