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太閤見た?消失の「松竹」復元へ 福山・沼名前神社の能舞台

松竹の絵が消失している沼名前神社能舞台の鏡板
松竹の絵が消失している沼名前神社能舞台の鏡板
鏡板の復元見取り図
鏡板の復元見取り図
沼名前神社能舞台。普段は雨戸で閉ざされ舞台上は見えなくなっている
沼名前神社能舞台。普段は雨戸で閉ざされ舞台上は見えなくなっている
現在も能が演じられている沼名前神社能舞台=2022年3月
現在も能が演じられている沼名前神社能舞台=2022年3月
 福山市鞆町後地の沼名前(ぬなくま)神社にある能舞台(国重要文化財)正面の鏡板に描かれ、経年劣化で消失していた松と竹の絵が2024年度、復元されることが決まった。改修が文化庁の活用補助事業に採択され、太閤も見たといわれる舞台が往時の姿を取り戻す。

 能舞台は、豊臣秀吉が京都の伏見城に設けた全国唯一の移動可能な組み立て式とされる。初代福山藩主・水野勝成が福山城内に移築し、3代勝貞が江戸前期に同神社に寄進した。17世紀以前の古い能舞台は、全国に4棟しか現存していない。

 鏡板の絵(縦1・9メートル、横5・2メートル)は桃山時代に狩野派の絵師が描いたと伝わるが、ほぼ消えて見えなくなっていた。20~21年に行われた屋根のふき替え工事の際、文化財建造物保存技術協会(東京)などが光を当てた筆跡調査や過去の写真、資料を基に分析し、復元見取り図を作成。神社が文化庁に申請し、復元を目指していた。

 一般的な舞台では鏡板の向かって右側面に描かれている竹を、松と一緒に鏡板内に配した珍しい構図。市文化振興課の榊拓敏文化財担当課長は「舞台の定型が定まる以前の意匠と思われ、能を愛好した秀吉の着想が現れている可能性がある」と指摘する。

 計画では、国重文のため上描きはできず、新しい板に岩絵の具やにかわといった当時の材料、技法を用いて模写する。舞台は現在、年2回の能上演時以外は雨戸で閉ざされているが、容易に開閉できるよう改修も行う。

 補助金交付は文化庁が2月に決定。総事業費1400万円のうち910万円を国が補助し、残りを広島県と市、神社が均等に負担する。4月にも事業者の選定を始め、24年度中の完成を予定する。

 奥茂宣宮司は「秀吉が使い、住民の自慢となっている舞台の復元がようやくかなう。保存のためにも活用を進め、一層地域に愛されるようになれば」と期待する。

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