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型破りの決算発表

 経済記事を担当する記者は、企業の決算発表に注目している。業績のほかに、設備投資や新事業などのニュースが出てくることがある▼発表資料の多くは「当年度における当社を取り巻く事業環境は…」といった紋切り型の文章だ。読み解く力が試される▼先月公表された、ある企業の決算の資料はユニークだった。話しかけるような文体で「明るい話題を二つお伝えさせてください」「前田選手、桐生選手、おめでとうございます!」と書かれていた▼陸上競技の天満屋・前田穂南選手と、日本生命・桐生祥秀選手のことだ。今年1月にそれぞれ、女子マラソンと男子60メートル走で、日本記録を更新した。決算を発表したアシックスは、両選手のシューズを手掛けたメーカーだ。文章にうれしさがにじんでいた▼マラソン用品を巡っては近年、米国・ナイキ製の厚底シューズが旋風を起こした。反発力が高く好記録を出せると注目され、東京五輪では着用した選手の活躍が目立った。日本企業も負けてはいられない。タイアップする選手の躍進は、ブランド力の向上につながるだろう▼パリ五輪へ向け、女子マラソンは国内の代表選考レースが終わった。東京五輪で33位と振るわなかった前田選手は、2大会連続の出場が決まった。選手にとっても、メーカーにとっても、パリは巻き返しの舞台となる。

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