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自民の党則改正 改革の実効性が不透明だ

 これで「政治とカネ」の問題がなくなるのか。再発防止の実効性は甚だ疑問だ。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、同党は今月、党則と、党則に準じるルールである「規律規約」、党の行動指針となる「ガバナンス・コード(統治原則)」を改正した。規律規約では、政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕または起訴された場合、議員に離党勧告を下せるように改めた。有罪判決が確定した場合は、さらに厳しい除名処分まで可能だが、「議員に政治不信を招く政治的道義的責任があると認めたとき」との条件付きである。

 政治的道義的責任をどのように判断するか。処分を下す党側の解釈次第で、処分が軽くなる余地がある。疑念を持たれた議員が関与を認めないケースも考えられ、厳格な対応ができるのか。曖昧さは否めない。

 今回の裏金事件に関しては、新ルールをさかのぼって適用することはない。しかし、共同通信社が今月実施した世論調査で、事件に関与した派閥幹部に「重い処分が必要だ」と答えた人は77・3%に上った。相応の処分でなければ、国民の理解は得られまい。

 ガバナンス・コードでは、基本原則に「政治資金の透明化と政治資金問題への厳格な対応」を追加した。その実現策として、資金と人事に関与する「旧来の派閥」の存続を禁止した。ただ「政策集団」を「党を補完し人材育成や若手議員の教育機能を担う自主的組織」として位置付けており、派閥的な集まりを容認した格好になっている。

 自民は1970年代のロッキード事件、90年代の野党転落を受けて派閥解消を進めたが、総裁選などを経て派閥が息を吹き返した歴史がある。党内の議員からは「派閥の枠を残したまま政策集団にするのは看板の付け替えに過ぎない」と指摘する声も上がる。

 党のルールの実効性に懸念が拭えない以上、強く求められるのは政治資金規正法の改正である。党則などの改正を正式決定した党大会で、岸田文雄首相(党総裁)は裏金事件が政治不信を招いたと謝罪し、開会中の通常国会での規正法改正に意欲を示した。だが、法改正の具体策を語ることはなかった。

 他党からは、会計責任者の監督に相当の注意を怠った場合、議員にも罰則を科す案などが出ている。自民も政権与党として議論を深めていく責任があろう。

 岸田首相は党大会で、裏金事件の関係議員に対し「説明責任の貫徹を促す」と強調した。だが、国会の政治倫理審査会の後も自民議員が積極的に説明する姿は見られない。

 そもそも実効性のある法整備には実態の把握が欠かせない。にもかかわらず、裏金事件がなぜ起こったのか、裏金は何に使われたのか、実態はいまだに闇の中だ。真相の解明が不可欠である。

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