山陽新聞デジタル|さんデジ

マイナス金利の解除

 わが国最古の説話集「日本霊異記」に、聖武天皇の時代の商人が鬼と出くわし、賄賂を贈って災難を免れる話がある。注目したいのは、この商人が商品を仕入れる際に寺から資金を借りていることだ。利子をつけてお金を貸し借りする営みが、奈良時代に行われていたと分かる▼長い金融の歴史の中でも、昨今は異例の状態だった。民間銀行が日銀にお金を預けても、金利を受け取れないどころか、逆に支払わねばならない。日銀のマイナス金利政策だ▼民間銀行に貸し出しを促し、世の中の金回りを良くしようと導入した。ただ、常識破りの政策には、負の側面も指摘されていた▼企業が資金を借りるときの金利が極端に下がり高い利益を上げる意欲が薄れるのではないか。国の借金の利払い費が少なくて済むため、財政規律が緩むのではないか、といった弊害である▼日銀はきのう、金融政策を大転換し、マイナス金利の解除を決めた。大幅な賃上げが相次ぐ今春闘などを踏まえ植田和男総裁は「賃金と物価の好循環の強まりが確認できた」と述べた。日銀が利上げに動くのは17年ぶりである▼暮らしに影響が及びそうだ。低利で借りているローンがどうなるか。物価上昇で資産を目減りさせないためには、どうしたらよいか。家計のやりくりも、デフレ時代からの脱却を考えていくときだろう。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP