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高額回答の春闘 中小企業への波及が重要

高額回答の春闘 中小企業への波及が重要
 2024年の春闘は、昨年以上に高水準の回答が続いている。賃上げを起点に個人消費を増やし、経済成長につなげる好循環を実現したい。この流れを中小企業に波及させることが重要だ。

 基幹産業の自動車は、トヨタが1999年以降で最高水準の賃上げを回答し、日産やSUBARU(スバル)も満額で応じた。日本製鉄は労働組合の要求を超えるベースアップ(ベア)を示し、定期昇給分を含めた賃上げ率は14・2%に達した。外食業では「すき家」のゼンショーホールディングスが12・2%、「餃子の王将」の王将フードサービスが11・5%を回答した。日本航空と全日本空輸は、33年ぶりの高水準となるベアを示した。

 連合が先週まとめた第1回集計では、傘下771労組の賃上げ率の加重平均は5・28%で、前年同期を1・48ポイント上回った。岡山県内でも、連合岡山が18日に発表した回答状況は10労組の単純平均で4・97%と前年同期より0・65ポイントアップした。連合岡山は「物価上昇が続き、賃上げへの期待が高まる中で労使が真摯(しんし)に交渉した結果だ」とする。

 今年の春闘は、約30年ぶりの高水準だった昨年をさらに上回る公算が大きくなってきた。22カ月連続で減少が続いている実質賃金も、近くプラスに転じるとの見方が出ている。今後、労使交渉が本格化する中小企業の動向が注目される。

 中小は大手に比べ、賃上げの余力に乏しい。日本商工会議所の調査では、2024年度に賃上げを予定する中小企業の6割が「業績は低調だが賃金を上げる」と回答した。人手不足を避けるため、防衛的に賃上げせざるを得ない厳しい状況がうかがえる。

 中小企業が賃上げの原資を確保するには、取引価格を上げていく必要がある。産業別労組・UAゼンセンが行ったアンケートによると、6割の個別労組が「価格転嫁は進展したが不十分」と答えた。大手企業は、中小の仕入れ先を含めたサプライチェーン(供給網)全体で賃上げが実現するよう努めてもらいたい。

 公正取引委員会は今月、日産自動車が下請け業者への支払代金を不当に減額していたとして、下請法に基づき再発防止を勧告した。人件費などの価格転嫁を巡っては、下請け業者と協議せずに据え置いたなどとして、ダイハツ工業、三菱ふそうトラック・バス、京セラなど10社の社名も公表した。賃上げの流れを社会全体に定着させるためにも、コスト上昇分を適切に価格転嫁できる商習慣の確立が求められる。

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