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参院で政倫審 説明責任果たせていない

 真相は「良識の府」でも明らかにならなかった。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件である。「政治とカネ」に対する国民の疑念は解消されず、深まる一方だ。

 参院できのう、政治倫理審査会が開かれた。事件の主舞台となった安倍派に所属していた議員3人が出席し、それぞれ弁明の後、質疑に応じた。参院の政倫審で議員を審査するのは1985年の設置後、初めてだった。

 3人のうち、発言が最も注目されたのは安倍派の参院側会長だった世耕弘成前参院幹事長だ。派の有力幹部「5人組」の一人である。同派はパーティー券の販売ノルマを超えた利益を議員に還流してきた。2022年、会長だった安倍晋三元首相の指示で中止を決めたが、安倍氏の死去後に復活させた。世耕氏はこの際の協議に参加していた。

 世耕氏は質疑で、22年8月に自身を含む安倍派幹部で集まり、資金還流を政治資金収支報告書に記載する案が出され、反対しなかったと説明した。ただ、この協議で復活が確定的に決まったことは「断じてない」と否定した。当時、派閥の会長代理として協議に加わった塩谷立元文部科学相は先の衆院政倫審で「困っている人がいるから仕方ないというぐらいの話し合いで継続になった」と述べていた。世耕氏の発言はこれと食い違いを見せており、実態は不明瞭なままだった。

 この日、政倫審で弁明した西田昌司元政調会長代理は安倍派幹部の説明責任について「全く果たされていない。誰一人、まともに答えている人がいない」と指摘。世耕氏の弁明を「全く納得できない」と批判した。真相解明には程遠いと言わざるを得ない。

 安倍派では、参院選の年に改選対象の議員側にパーティー券の販売ノルマ分と超過分を合わせた全額を還流させていたことが判明している。この独自ルールについて世耕氏は「いつからあったか、誰が決めたのかも分からない」と述べ、関与を否定した。だが、参院側の派閥トップならば、資金還流が問題となる中、経緯を把握して政倫審に臨むべきではなかったか。説明責任から逃げるような姿勢は到底容認できない。

 資金還流の仕組みが始まった時期について、世耕氏は「少なくとも十数年前」との認識を示した。橋本聖子元五輪相は存在を「10年以上前から」知っていたとした。だが衆院政倫審と同様、いつ、誰が始めたかについて明確な説明はなかった。派閥会長を務め、これまでの経緯を知る可能性のある森喜朗元首相への確認が欠かせまい。

 政倫審は18日、衆院で再び開かれ、安倍派の会長代理を務めた下村博文元文科相が出席する予定だ。安倍氏死去後の還流復活を協議した場に出席していたとされ、経緯を知り得るキーパーソンだ。説明責任をきっちりと果たすべきである。

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