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飛ばないバット

 プロ野球巨人で好打の二塁手として活躍した篠塚和典さんは高校時代、金属製バットを使わず木製バットで通した。金属と木製では打ち方が違うそうで、プロになった時に順応しやすくするためだったという▼甲子園の高校野球に金属製バットが登場したのは1974年夏。2年生の篠塚さんが4番サードで出場した銚子商(千葉)が優勝した大会だ▼以来50年。すっかり定着した。筋力トレーニングで体を鍛え上げた選手たちが使いこなし、82年夏と83年春を連覇した池田(徳島)の「やまびこ打線」が記憶に残る人も多かろう▼来週18日からのセンバツは、少し様相が変わるのかもしれない。打球が飛びやすいとされる従来品を認めず、反発力を抑えた新基準の金属製バットに完全移行するからだ。バットの最大直径を3ミリ減らすなどし、打球の初速が3・6%落ちるという▼強くて速い打球にさらされる投手の負傷防止が目的である。2019年夏には学芸館(岡山)の投手が顔面に打球を受けて骨折した。その後、日本高野連は新基準の採用を打ち出した。選手の安全確保は最優先すべきであり、当然の対応だ▼低反発性バットは芯で球を捉えないと飛ばないとされる。派手な打撃戦は減るかもしれないが、小技や機動力を使った戦いも野球の面白さの一つ。新時代の戦いぶりに期待したい。

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