山陽新聞デジタル|さんデジ

桃の花 凍霜害対策で指標を作成 枯死防止へ岡山県農業研究所

低温で雌しべが茶色になったつぼみ(左)と正常なつぼみ。変色して枯死すると結実しない(岡山県農業研究所提供)
低温で雌しべが茶色になったつぼみ(左)と正常なつぼみ。変色して枯死すると結実しない(岡山県農業研究所提供)
 桃の花が耐えられる寒さの限界は―。岡山県農業研究所(赤磐市神田沖)は、寒さで花やつぼみが枯れる凍霜(とうそう)害対策を桃農家が講じる際の判断基準となる気温の指標を作成した。暖冬で生育が早まった分、春先に寒さがぶり返して枯死するケースが増えており、指標を示すことで安定生産を後押しする狙い。

 「白鳳(はくほう)」「清水白桃」「おかやま夢白桃」「白皇(はくおう)」「白露(はくろ)」の5品種を対象に2022、23年シーズンに調査した。つぼみがほんのり色づき始める「花蕾(からい)赤色期」から花びらが散る「落弁期」まで、生育ステージを六つに分類。切り枝を温度制御できる特殊な装置に入れ、1時間以上さらすと30%以上の雌しべが枯死する温度をそれぞれのステージで割り出した。

 例えば清水白桃の場合、花蕾赤色期(おおむね3月中旬)マイナス3・2度▽ほころび始めの花弁露出始期(3月下旬)同3・8度▽花弁露出期(3月下旬~4月上旬)同3・3度▽開花前後(同)同3・0度▽満開期(4月上旬)同3・1度▽落弁期(4月上中旬)同3・0度―となった。

 花芽は冬の間休眠し、気温上昇とともに成長して開花する。研究所によると、花が凍ると雌しべが茶色になって枯死し、実を付けなくなる。かつて凍霜害は北日本で広く発生し、県内での被害報告はほとんどなかった。しかし、地球温暖化などで暖冬が続き、県内の平均満開日は1997~2008年が4月8日だったのに対し、19年以降は同2日に前進。このため春先の低温や降霜による被害が目立ち始めたという。

 指標作成は、21年春に県内各地の桃産地が凍霜害に見舞われ、当時過去最低の出荷量となったのを受けて着手した。指標は近くホームページで公表するほか、県農業普及指導センターを通じて周知する。対策は、明け方に園地で火をたくことが有効とされ、福島、長野県などの果樹産地で取り組まれているという。

 研究所果樹研究室は「今年の冬も平均気温が高い状態が続き、被害発生の恐れがある。指標を目安に対策を講じてほしい。標高が高く気温が下がりやすい園地には、耐凍性が比較的高い品種を植えるなど、植栽計画にも活用してもらえれば」としている。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP