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岡山市の一括回収 プラごみ削減の歩み前に

 家庭から出るプラスチックごみを回収し、資源としてリサイクルする仕組みが今月から岡山市で始まった。一人一人が分別の手間を惜しまず、プラごみ削減の歩みをさらに進める契機としたい。

 菓子袋や卵パックなどプラスチック製の容器包装と、文房具やおもちゃといったプラ製品を同時に集めるため「一括回収」と呼ばれる。生活に身近なものが多く、資源として出すか迷う場合は市のガイドが参考になる。

 岡山市は約71万人の人口を抱える。市の2023年度調査によると、回収した可燃ごみの容積のうちプラごみは47%を占めており、いかに多いかが分かる。運営を委託している民間の中間処理施設に運んで選別や圧縮、梱包(こんぽう)をし、リサイクル工場に搬出。荷物を載せるパレットやコンテナに生まれ変わる。

 22年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」に基づく対応である。既に回収の仕組みがあったペットボトルや食品トレーだけでなく、使用済み製品を含めたプラ全般を回収してリサイクルすることを自治体の努力義務とした。岡山県内では促進法施行以前から真庭市と勝央、奈義町、新庄村が独自に始めている。

 岡山市はこれまでプラスチックを可燃ごみとして回収。焼却時に発生するエネルギーを発電に利用してきた。ただ焼却は温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)発生を伴う。50年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」を21年に表明したことも、一括回収に乗り出した背景だ。市の計画では、プラごみがなくても焼却炉の稼働に必要な燃焼温度は確保できるという。

 1日の開始早々、回収対象ではないビデオテープや、ブルーシートが50センチ未満に切られないまま出され、中間処理施設の稼働が一時停止するトラブルも起きている。市民にさまざまな疑問や戸惑いがあるのは間違いない。市は引き続き説明を尽くし、理解を得ていく努力が欠かせない。

 気になるのは促進法施行を受け、県内では岡山市以外の自治体が一括回収に二の足を踏んでいることだ。県が2月に開いた説明会では、市町村側から「ごみ出しのルールが大きく変わるので住民への周知が難しい」「施設整備に費用がかかり、人員増に対応できるかも不明」といった声が出た。財政面などで国や県の支援強化が必要だろう。

 促進法はプラ製品の設計から製造、販売、回収、リサイクルまでの流れ全体について措置を定めている。プラ製品を多く提供する事業者には削減を求めており、紙製ストローや木製スプーンも増えてきた。国、自治体、企業、消費者それぞれが改めて意識を高めたい。

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