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特撮怪獣がつなぐ夢

 今や「子ども向け」「子どもだまし」などと傍流扱いだった頃を思い出すのも難しい。日本映画界の花形、アニメと特撮怪獣が今年の米アカデミー賞で輝いた▼プレゼンターが授賞作を読み上げ、会場が沸く瞬間は何度でも見たくなる。長編アニメーション賞に選ばれたのは宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」。視覚効果賞は山崎貴監督「ゴジラ―1・0」▼ゴジラは他の候補作に比べて製作費が桁違いに少ないと事前から話題だった。戦闘機のセットを人力で動かすようなアナログな特撮と最新のデジタル技術を組み合わせ、あえて手作りの感触を残したという▼この手法、山崎監督の得意技と言っていいのだろう。岡山市や真庭市でロケした「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズでも昭和30年代の暮らしを細やかに再現していた▼工作好きの小学生時代、クリスマスに希望通り画用紙とわら半紙を100枚ずつもらい「これで何でもできる」と小躍りした思い出や、担任の先生に「空想でも観察でも、好きなことをノートいっぱいに書いてごらん」と促された経験が創作の原点だそうだ▼地元・長野県のPTA会報誌で語っている。「みんなが否定する中で『宝物』を認めてくれる大人がいたら、でかい」。そうして信じる道を進んだ人が、次の世代にもたらした夢も、飛び切りでかい。

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