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東日本大震災13年 岡山も液状化の強い懸念

 2011年の東日本大震災から、きょうで13年を迎えた。津波や原発による甚大な被害の中であまり目立たなかったが、緩い地盤が液体状になる「液状化」の影響は深刻だった。東京湾岸など震源域から遠く離れた場所でも発生することが示された。

 今回の能登半島地震でも震源域に近い石川県だけでなく新潟、富山県などで発生し、巨大地震では遠方も危険性があることを改めて思い知らされた。近い将来に発生が予想される南海トラフ巨大地震に対する岡山県などへの教訓として捉えるべきだろう。

 東京ディズニーランドが立地していることで知られる千葉県浦安市は、東日本大震災で著しい液状化被害を受けた。道路から筒状に隆起したマンホール、地下から噴出した大量の土砂や水、亀裂の入った道路や傾いた建物…。市域は東京湾沿いの埋め立て地が多く、地盤が弱いために被害が拡大した。

 液状化は人的な被害はさほどないものの、影響範囲が地域全体に及び、水道や道路といったインフラへの打撃が大きい。復旧・復興は個々の住宅再建にとどまらず、道路を含めた地域全体の地盤改良や、被災前と地形が変わった部分をどうするかが課題となる。多大な時間や費用を要して生活に大きな影響を及ぼす。なのに液状化被害についての一般的な認知度が低いのは問題だろう。

 今、同じような状況が能登半島地震で見られる。国土交通省によると宅地の液状化被害の推計は、石川県のほかに新潟県と富山県の計約1万5千件にも上る。

 岡山県でも1946年に紀伊半島沖を震源に起きた昭和南海地震で、県南部の広い範囲での大きな被害が報告されている。岡山市西大寺地区で地面が割れてヘドロ状の泥が噴き出し、地盤は平均で約50センチも沈んだ。倉敷市連島地区では耕地に亀裂が入り、水が噴き出した場所が千カ所にも上った―。もともと海だったのを干拓した地域を中心に被害が広がったとみられる。

 県が2013年に作成した南海トラフ巨大地震による液状化危険度分布図では、地盤が弱いと考えられる県南部の干拓地・埋め立て地や、川沿いの砂地などを中心に「危険度は極めて高い」「危険度は高い」とされている。岡山、倉敷市の人口が密集した市街地を多く含み、極めて重大な影響を受けると受け止めざるを得ないだろう。

 県は「現在、液状化被害の予防対策として完全なものはない」とし、地盤調査の重要性を強調しているが、対策の具体化は容易ではない。能登半島地震の被災地の自治体にも戸惑いが見られ、国、県との勉強会開催やボーリング調査の準備を進めるなどしている。住民の生活再建のために早めの方針決定が望ましいが、見通しは不透明だ。岡山などでも、液状化の知見の収得や態勢整備が求められる。

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