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「受注漁」に励む若き漁師夫妻

 “あなたの専属漁師”―。こんなキャッチフレーズで、消費者や飲食店からの事前の注文に応じて漁を行う「受注漁」に取り組んでいるのが玉野市の富永邦彦さん、美保さん夫妻の「邦美丸」だ。地域産品を生かした活性化事例を顕彰する国の本年度「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」で奨励賞に選ばれた▼通販サイトなどで注文を受けて必要量だけを水揚げし、余分に取れた魚は海に戻す。魚種を指定しない地魚の詰め合わせが主力の商品だ▼4~9月は底引き網漁、10~翌年3月はノリ養殖をしている。受注漁を始めたのは2年前で、新型コロナウイルス禍が契機だ。市場出荷と併せ行っていたネット通販で、飲食店からの注文が減る一方、巣ごもり需要で新鮮な魚を求める消費者からの引き合いが増加。受注した分だけ魚を取るスタイルを思い立った▼価格は自ら決めるため市況に左右されず、売り上げは倍増。労働時間は半分に、漁船燃料も削減できた▼昨年から仲間の漁師と連携し漁業の体験イベントも始めた。食育だけでなく、高齢漁師や新規就業者の収入源になればとの思いからだ▼夫妻は共に37歳で3人の子育て中。「労働時間が減り、家族とのかけがえのない時間という副産物がもらえた」と邦彦さん。限りある資源を守り、持続可能な新しい漁業に励む若き漁師夫妻の姿が頼もしい。

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