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「火の玉」か「火だるま」か

 「火の玉になって」か「火だるまになっても」か―。どちらだったのかが、話題になったことがある。1996年、岡山県選出の橋本龍太郎首相が、後の中央省庁再編につながる大きな行政改革に挑もうとする時だ▼首相官邸で加藤紘一自民党幹事長と会談。終了後、待ち構えた記者団に加藤氏が、行革に取り組む橋本氏の覚悟の言葉を伝えた。それがあいまいで、東京支社に勤務しその場で取材していた筆者も、どちらが正しいのかと疑問を抱いた▼後の国会答弁で橋本氏は「私は実は、火の玉と言ったと思ったが、みなさんには火だるまという言葉の方が残ったようです」と語った。別の記者会見では「どちらを取っていただいてもいい。いずれにしても、やらねばならない」と言葉よりも実践を強調した▼さて、派閥裏金問題に関して国民の信頼回復へ「火の玉になる」と明言した現首相の岸田文雄氏。威勢のいい言葉とは裏腹に、実行力が伝わってこない▼先週の衆院政治倫理審査会では、関係する派閥幹部とともに自ら出席したが、従来の説明の域を出ず、疑念払拭には程遠い結果だ▼深まる政治不信に本紙時事せんりゅうには、〈数字見て気温と思えば支持率か〉。そして〈火の玉より火だるまが似合う岸田さん〉。今週からどう対処するのか。うやむやなままでの幕引きは許されない。

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