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株価最高値 投資と成長 好循環目指せ

株価最高値 投資と成長 好循環目指せ
 東京株式市場の日経平均株価が先月、バブル期の1989年に記録した最高値を超え、1日には4万円の大台に迫った。日本経済が「失われた30年」といわれる長期低迷から脱却しつつあるとの期待感が、株価を押し上げている。日本企業は成長への投資に資本を振り向け「稼ぐ力」をさらに伸ばしていくことが求められる。得られた利益を従業員の賃上げにも充て、経済の好循環を実現したい。

 日経平均株価は昨年の1年間で30%上がり、今年に入っても約2カ月間で20%の上昇と勢いを増している=グラフ。株高の要因はさまざまあるが、まず日本企業の収益力が着実に上がってきたことが挙げられる。新型コロナウイルス禍が一段落して経済活動が回復した。為替の円安傾向が輸出企業に有利に働いたほか、訪日外国人客が増えてサービス業も潤った。2023年度の企業業績は過去最高水準になると見込まれる。

 最近の日本株の主な買い手となっているのは、海外の投資家だ。円安で日本の株価を割安に感じている。不動産不況などで低迷する中国に代わる投資先として、日本を選んでいる面もある。

 東京証券取引所が昨春、上場企業に「株価を意識した経営」を求めたことも大きい。株主還元の強化や事業戦略の見直しなど、対策に取り組んでいる企業の一覧表の公表を始めた。資本を遊ばせない緊張感のある経営を促すことが日本株の魅力アップにつながっている。

 今年1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)も相場を後押ししている。非課税となる投資枠が最大800万円から1800万円に広がり、新たに投資を始める人が増えてきた。

 ただ、急速な株高は経済の実態とかけ離れ、過熱感があるとも指摘される。食料品やエネルギー価格が高止まりし、物価上昇を加味した実質賃金は21カ月連続で減少が続いている。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)は年率換算で0・4%減と、2四半期連続のマイナスとなった。

 今の株高を持続させるには、引き続き各社が収益力を高めることが大切だ。バブル崩壊以降、日本企業の多くはコスト削減など「守りの経営」に重きを置いてきた。設備や研究開発に積極的に投資する「攻めの経営」で、稼ぐ力を強化していかねばならない。人材への投資も重要で、今月本格化する春闘が注目される。大幅な賃上げが実現すれば個人消費が下支えされ、持続的成長につながるだろう。

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