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枕を高くして寝る

 「枕を高くして寝る」との慣用句がある。心配事がなく、安心して眠る、との意味は、ご承知の通り。語句の成り立ちは定かではないが、中国の歴史書に記述があるという▼戦国時代、秦(しん)の王に仕える思想家が魏(ぎ)の王に説いた。「魏が秦と組めば、周りの楚(そ)や韓(かん)はきっと攻めてこない。大王は枕を高くして眠ることができ、何の心配もなくなるでしょう」▼さて現代。枕が高すぎては安心して眠れないようだ。国立循環器病研究センター(大阪)の研究である。高く硬い枕は、脳梗塞を起こす原因となる首の動脈の病気に関係していることを突き止めた▼動脈の内側が裂け、血管にできた血栓が脳の血管を詰まらせることがある。研究チームは、この病気の患者の中に、極端に高い枕を使っている人がいることに着目。2018年から5年間に、この病気で入院した53人と、それ以外の原因で入院した53人で、普段使っている枕の高さを比較した▼その結果、枕が高い人ほど、首の屈曲が大きくなるなどで発症しやすいことが分かった。柔らかい枕を使えば、影響は緩和される傾向もあり、チームは「枕を変えるだけで容易にリスクを下げられる」と呼びかけている▼枕の語源は「魂倉(たまくら)」との説がある。睡眠時、体から離れた魂が宿る所というわけだ。健康に大事な枕。高くしすぎないよう、用心を。

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