山陽新聞デジタル|さんデジ

とんと立つ

 先に89歳で亡くなった元岡山県詩人協会長のなんば・みちこさんは小中学校の教員も長く務めた。50歳の時に養護学校(現特別支援学校)に赴任し、人生観が変わったという(「井奥行彦 なんば・みちこ 詩と愛の記録」奥富紀子編著)▼〈あなたがゆっくり歩くので/わたしもゆっくり歩くすべを覚えました/あなたがすぐに立ち止まるので/わたしも立ち止まるすべを覚えました/どんなに多くを/見落としていたか/聞き落としていたか/そして わかりました〉。この詩を収めた詩集「とんと立つ」のタイトルには、障害のある子どもたちが自立できるようにという願いを込めている▼自立の助けになるだろう。倉敷市の倉敷まきび支援学校で年金セミナーがあり、高等部3年生と保護者が年金事務所の職員から制度や受給の手続きについて説明を受けた▼支援学校を卒業した生徒は、65歳からの老齢年金を待たずに、障害の程度などによっては20歳から障害年金を受け取れる可能性がある。受給の可否は切実な問題だ▼障害年金を巡っては「分かりやすい説明が少ない」と、ある保護者が語っていた。制度を知る機会がもっと増えるといい▼卒業シーズンを迎えた。生徒たちは就職した企業や就労支援の事業所などそれぞれの道を歩みだす。助けを得て自立ができるように、やはり願う。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP