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「つくたべ」の役割分担

 略して「つくたべ」というらしい。ゆざきさかおみさんの人気漫画「作りたい女と食べたい女」。NHKが連続ドラマ化し、現在2シーズン目を放映している▼描かれるのは独身女性2人の交歓だ。料理が趣味の野本さんはあれもこれも目いっぱい作りたい。が、一人では食べきれない。ある日、同じマンションに住む春日さんの旺盛な食欲を知って夕食に誘う▼女性がみんな「彼氏」や「家族」に振る舞いたくて台所に立つわけではないし、大食だっていい。そんな当たり前の視点が共感を呼んでいるそうだ。裏を返せば、現実社会はそうではないということか▼先日も「男性もカレーくらい作ってほしい」の見出しで全国紙が報じていた。能登半島地震の被災地では、避難所の炊き出し係が30~50代の女性に固定化する傾向があり、毎日3食、大量の煮炊きで疲弊しているという▼日頃からある性別役割分担が災害時に強まるとの指摘は東日本大震災でも聞かれた。力仕事はできないから炊事を―と頑張ってしまう気持ちは分かるが、被災女性が無償で続ける負担は相当大きいとした国の調査もある▼「私作る人、僕食べる人」とうたった食品CMが物議を醸してから来年ではや50年。食事を作り共にする楽しさ、大変さ、かけがえのなさに男も女もないと、世の意識はどれだけ変わっただろう。

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