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「枯れ葉」(2023年、フィンランド・ドイツ) どんな人にも希望はある

 シネじい 小津安二郎監督の「お早よう」(1959年)を久しぶりに見たけど、抜群に面白かったなあ。

 黒じい 監督晩年のあのユーモラスな作品ですな。

 シネじい そう、なんとオナラ映画(笑)。

 黒じい そうそう。日本が誇るあの巨匠がオナラ映画(笑)。

 シネじい ていうか、新興住宅地で起きるちょっとした事件を描いているんだよね。

 黒じい この住宅地には、自由にオナラができるおじさんがいて、子どもたちの憧れのまと(笑)。おじさんが、プー、とやるとその奥さんが「あんた、呼んだ?」と言って向こうから現れる繰り返しギャグがまずおかしいね。

 シネじい 子どもたちも、おでこを指で押したらプーと出す、という遊びに夢中だ。中には失敗する子がいて、「み」が出てしまう。 

 黒じい 「み」って言うな(笑)。失敗した子が「かあちゃん、パンツ出してくれよう」。母親役の杉村春子に「ばかだよ、この子は」。

 シネじい この子とは違う林家の兄弟は、オナラが得意。それはいいのだけど、隣家へテレビを見にいく日々。家にテレビが欲しくってしょうがない。父親の笠智衆に、何度もねだるが、うんと言ってもらえない。

 黒じい テレビの低俗な番組に対して「一億総白痴化」と批判する言葉が流行していて、それをお父さんは気にしていたんだね。

 シネじい 兄弟がそれでもねだり続けると父親はキレて「だいたいお前は男のくせに口数が多すぎる!」。兄は、「なんだい、大人だって、お早よう、いい天気ですね、ごきげんよう、って意味のない言葉をいっぱい言ってるじゃないか!」と、正確ではないが、そのようなことを言って、兄弟でだんまりストライキを決行する。

 黒じい このストが大人たちの間に波紋を広げていく。兄弟のおばさん(久我美子)が翻訳の仕事を依頼している元出版社員佐田啓二が、「でも考えてみれば、そういうむだのように思えるやり取りも社会生活を支える役に立っているんじゃないかな」。これもまた正確ではないがそのようなことを言う。

 シネじい いいこと言うと思ったよ。互いに意識している佐田啓二と久我美子も実は、ちゃんとした思いを言葉にできないでいる。だからこれ、一種のコミュニケーション論映画なんだよね。

 黒じい オナラもまたコミュニケーションの手段(笑)。

 シネじい 今回取り上げる映画は、ミニマルコミュニケーション映画だな。フィンランドのアキ・カウリスマキ監督作品だ。...
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