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にぎわいと復興 文化の力で後押し 真備の施設、多彩な催し企画

マービーふれあいセンターで開かれたロビーコンサート=12月10日
マービーふれあいセンターで開かれたロビーコンサート=12月10日
 西日本豪雨で大きな被害を受けた倉敷市真備町箭田の文化施設・マービーふれあいセンターが、コミュニティーの再生を支えている。音楽などのイベントを積極的に展開し、地元住民の協力を得てカフェも開業。復興の軸足がハードからソフト面にシフトする中、住民交流やにぎわい創出を担う拠点として存在感を発揮している。

 清らかなピアノの音色が響く。12月10日、同センターで開催されたロビーコンサート。くらしき作陽大出身のピアノデュオ「Piano Duo Lazo」が流麗な演奏を披露し、約200人が聴き入った。同市の参加者(76)は「素晴らしい演奏。観客も大勢いて、元気が出ますね」と話していた。

 コンサートは、地元のピアニスト橋本里香さん(40)=同市=から寄贈されたグランドピアノを活用し、昨年12月にスタート。吹き抜けのロビーを舞台に、プロやアマチュアのピアニスト、歌手、管楽器奏者らを招いて月1回開いている。

 「間近で演奏を聴け、立ち見などでカジュアルに楽しめる。地元だけでなく市外からも多くのファンが足を運んでくれる」と、企画した小野行弘館長。コンスタントに100人以上が訪れる人気イベントとして定着し、交流人口増加に貢献している。

 1996年に開館した同センターは約千人収容のホールや会議室を備える同地区最大の文化施設だ。豪雨時は約3・5メートルの高さまで浸水し、音響機器や楽器も全て壊れ一時的に閉鎖されたが、市は総事業費16億円を投じて復旧を進め2021年7月、3年ぶりの利用再開にこぎ着けた。伊東香織市長は「復興に欠かせない施設。一刻も早く再開できるよう全力で取り組んだ」と振り返る。

 復旧後は新規のイベントを相次ぎ企画。隣接する真備図書館、真備児童館と連携し、音楽ステージや体験イベントを多彩に展開する「ふれあいフェスティバル」を22年から始め、23年秋にも開催した。書画展など公募した文化イベントを実施する「市民企画」は今年2月に初めて開き、来年1月に2回目を予定する。

 施設内の飲食店「マービーカフェ」は22年秋にオープン。地元の人が集う場にと、中山悍慈さん(78)=同市=ら住民有志が運営に乗りだし、毎週土曜の昼に営業している。観光客らに楽しんでもらおうと、真備町地区の復興をテーマにしたオリジナルカレーも企画。プロの演奏と地元産食材を使った料理を楽しむ「音楽会」も5月に初開催し、にぎわいを演出している。

 「これからも面白い企画を考えていきたい」と小野館長。音楽を中心に作品展示や子どもらを対象にした参加型イベントを増やす考えで「文化の力で真備のにぎわいと心の復興を後押ししていく」と力を込める。

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