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中1の熱中症搬送から考える部活 識者「加速的に重症化」と警鐘

救急搬送される中学生=保護者提供
救急搬送される中学生=保護者提供

 今年7月、山形県米沢市で部活動からの帰宅中の女子中学生(13)が、熱中症の疑いで死亡した。岡山市内でも8月、中学1年の男子(13)が、部活を終えて帰宅中に熱中症で倒れ、その後、救急搬送されるケースが発生した。9月に入っても厳しい残暑が続く中、子どもたちの安全をどう確保するべきか。今回の事例から、部活動の熱中症対策について識者に意見を聞いた。

 「倒れている息子を見て、頭が真っ白になりました」。男子中学生の母親(49)は、当時の状況を振り返る。サッカー部の試合後、なかなか帰ってこない息子を自宅付近で探していると、歩道で自転車にまたがったまま、ブロック塀にもたれるように倒れているのを発見した。近づくとか細い声で「助けて」と言った。

 急いで自宅に連れて帰り、全身に水シャワーをかけた。ところが、まもなく全身けいれんを起こし、激しく嘔吐(おうと)。水も飲める状態ではなく、救急車を呼んだ。その後、岡山市内の病院に搬送され、点滴を受け、無事体調は回復した。「もしあの時、見つけていなかったらと思うとぞっとする」と母親。今回の事例を基に、高温環境での運動を研究する川崎医療福祉大健康体育学科の小野寺昇特任教授(68)に意見を求めた。

中1の熱中症搬送から考える部活 識者「加速的に重症化」と警鐘

■必要なのは水分と塩分



 母親の話によると、サッカー場に水道はなかったものの、男子中学生は当日、持っていた茶やスポーツドリンクで合計5リットルの水分を補給していた。小野寺特任教授によると、脱水には水不足と塩分不足の2種類があり、水分が足りない場合は汗が出なくなり、塩分が足りない場合は体温調節が機能しなくなるという。今回の場合は塩分の不足ではないかと推測する。また、水分は1回に125~250ミリリットルを飲めば十分で、これ以上を一気に飲んでも体は吸収しきれない。1リットルの水に2グラムの塩を入れた飲み物を持つことも勧める。


■注目すべきは湿度



 熱中症は温度だけでなく、湿度にも注目が必要という。運動すると、体から汗が出て気化熱によって体を冷やす。ところが、湿度が高いと蒸発しにくいため、熱がこもってしまうそうだ。曇りの日は快適に運動ができそうにも思えるが、「湿度が高くなるため注意してほしい」と呼びかける。

 当日、男子中学生は観戦のみで、試合に出場していなかった。激しい運動をしていないからといって油断してはいけない。母親の話によると、サッカー場は日陰のない場所だった。小野寺特任教授は「太陽の輻射(ふくしゃ)熱を体が吸収することでほてり、さらに体の水分が失われてしまう」と指摘する。

汗が蒸発しにくいことで熱がこもる(Zenzeta /stock.adobe.com)
汗が蒸発しにくいことで熱がこもる(Zenzeta /stock.adobe.com)

■暑さ指数どう判断するか



 気温や湿度から算出する「暑さ指数」(WBGT)は、熱中症の危険度を表す環境省公表の数値。...
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