山陽新聞デジタル|さんデジ

アユモドキ 屋外人工繁殖に成功 岡山の守る会、全国初の快挙

屋外での人工繁殖で誕生したアユモドキの稚魚=10日
屋外での人工繁殖で誕生したアユモドキの稚魚=10日
人工池で魚の成長具合を調べる「瀬戸アユモドキを守る会」メンバーら=10日、岡山市東区瀬戸町万富
人工池で魚の成長具合を調べる「瀬戸アユモドキを守る会」メンバーら=10日、岡山市東区瀬戸町万富
 国天然記念物の淡水魚アユモドキを絶滅の危機から救うため、生息地・岡山市東区瀬戸町地区の保護グループ「瀬戸アユモドキを守る会」が挑んできた屋外での人工繁殖で、10日までに産卵とふ化が確認された。人工繁殖はこれまで、条件を整えやすい屋内の水槽内での飼育しか成功例がなく、挑戦5年目で全国初の快挙を果たした。

 守る会は、キリンビール岡山工場(同瀬戸町万富)の協力を得て、構内のビオトープ(人工池)で約50匹を飼育している。6月21日に直径約2ミリの卵12個を確認した。水槽に移して観察を続けたところ、23日までに稚魚4匹が誕生。1匹のみが体長1センチ強に育った。

 アユモドキは川や用水路で暮らし、繁殖期の夏に洪水などで水没した土地へ移動して卵を産む特殊な生態を持つ。守る会は人工池の水際に産卵場所を設け、水位の上下で洪水に似た環境をつくるといった工夫を重ね、繁殖行動を促した。

 池にはまだ卵を抱えた雌が残っており、今季、もう一度産卵に挑戦する計画。10日、池で魚を調べ、成長具合を確認した。小林一郎会長(79)は「地域の宝の稚魚誕生に一安心した。住民の保護意識醸成にも生かしたい」と話す。

 環境省希少野生動植物種保存推進員で、繁殖を指導してきた阿部司さん(41)=岡山市出身、滋賀県近江八幡市=は「種の保存に向けた大きな一歩。狭い水槽内よりも遺伝的に多様な個体が得られる。安定して多くの個体が得られるよう技術を確立したい」としている。

 山陽新聞社は地域の課題解決や新たな魅力創出を図る「吉備の環(わ)アクション」として、アユモドキ保護の活動を紙面掲載で後押ししている。

 アユモドキ 体の形や色がアユに似たドジョウ科の魚。日本固有種で、現在は岡山市と京都府亀岡市の一部に生息する。水槽での人工繁殖は手法が確立され、岡山市では高島、千種小を拠点に実施。環境省のレッドリストで絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧IA類」に指定されている。

あなたにおすすめ


さんデジ特集

TOP