とんび(2022年4月8日公開)
津山市出身の直木賞作家・重松清のベストセラー小説を、阿部寛と北村匠海の共演で実写映画化。不器用な男・ヤスは、愛する妻の妊娠にもうまく喜びを表せない。幼い頃、両親と離別したヤスにとって“家族”は何よりのあこがれだった。時は1962(昭和37)年、瀬戸内海に面した備後市。息子アキラのためにも、運送業者で懸命に働くヤス。だが、ようやく手にした幸せは、妻の事故死によって打ち砕かれる。悲しみに沈むヤスだったが、人情に厚い町の人々の手を借りてアキラを育ててゆく。そんなある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をついた─。
原作:重松清
監督:瀬々敬久
出演:阿部寛、北村匠海、杏、安田顕
■海蔵寺(倉敷市)
ヤスの幼なじみ昭雲がいる、備後市随一の古刹・薬師院として登場。ヤスの実母の墓参帰りに妻が産気づき、アキラが生まれる。海が見える墓地があり、映画「釣りバカ日誌18ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」(2007年)のロケ地でもある。
■浮橋(ドラム缶橋、倉敷市)
倉敷市玉島地区の旧市街を二つに分けて流れる川に架かる橋。ドラム缶を横倒しにして35個、それを3列並べて川幅48メートルをつないでおり、「ドラム缶橋」と呼ばれている。ヤスが、保育園で友達と母親を巡りけんかをしたアキラを自転車に乗せ、なぐさめながら帰るシーンでお目見えする。
■金光町大谷地区(浅口市)
昔ながらの商店街があり、昭和レトロな町並みを残したエリア。ヤスとアキラ、2人を見守るたえ子さんが営む小料理屋「夕なぎ」があるメインの舞台として登場する。電気屋、駄菓子屋、料理屋と、昭和の雰囲気を醸し出すため、美術装飾も細部にこだわっており、時代の移り変わりととも趣を変える商店街に注目。
■青佐鼻海岸(浅口市)
母親がいないアキラをなぐさめるため、夜中に薬師院の和尚・海雲らがアキラを連れ出し、父親だけでなく周りのみんながアキラの成長を見守っているという気持ちを伝える場面。海雲がヤスに「お前は海になれ」という名言も生まれた。
■柳青院(備前市)
薬師院の外観として使われた。片上湾を望む小高い場所にあり、縁側が広く、窓も木枠で、古き良き寺院のたたずまいを残す。
■こぼれ話
撮影は2020年11~12月。真冬だが、ヤスの仕事場である運送会社など、夏の場面を撮影するシーンが多かった。霧吹きで“汗”を演出。感染防止のため、炊き出しはできず、セルフで食べられるフリーズドライのみそ汁が大変喜ばれたという。
また、コロナ禍での撮影ということもあり、現場に入る前と撮影終了後には、建物内などを噴射機で消毒。感染対策を徹底した。