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公園遊具の老朽化 安全と利用促進の両立を

 各地の都市公園にある遊具で事故が後を絶たない。老朽化したものも少なくないため管理する自治体は安全点検を徹底し、予算を確保して計画的に更新していくことにも力を入れてほしい。

 玉野市の深山公園で今月、子どもと遊びに来ていた30代男性が木製のアスレチック遊具に乗ったところ柱が根元から折れ、転倒して左肘を骨折した。木材の腐食が原因だった。1994年ごろに設置されていた。岡山市では2020年、鉄製の登り棒が破損して中学生が手首を骨折。総社市では18年、滑車の付いたロープにつかまって遊ぶ遊具が壊れ、小学生がけがをした。いずれも老朽化が原因とみられている。

 公園は、第2次ベビーブームに当たる1970年代以降に各地で整備が進み、長い年月がたった。国土交通省の2019年度調査によると、全国の都市公園には約39万基の遊具があり、半分が劣化による不具合が起きやすいとされる設置から20年以上が過ぎていた。すぐに修繕や撤去が必要なものは18・5%あった。

 管理する自治体は、国交省が02年に定めた安全指針や遊具メーカーの業界団体がまとめた安全基準に沿い、危険な遊具を撤去してきた経緯がある。回転ジャングルジムは止めようとしたときに指が挟まる恐れがある、高低差のある滑り台はスピードが出すぎるといった理由だ。親しんだ世代には寂しい面があろう。

 岡山市は19年、700基を一斉に使用禁止とし、約2年かけて更新、修繕などの対策を済ませた。福山市は200基について順次取りかかっている。ただ、財源や人手の事情で対策が遅れている自治体が多いのが実態である。

 安全確保を巡っては市民からの通報も重要だ。近年は異常を発見した利用者がスマートフォンで写真を撮影し、公式LINEから送信できるシステムを岡山市などが導入している。電話よりも正確に状況を伝え、速やかな対応につながる利点がある。

 遊具の更新に当たっては時代に即した工夫が求められよう。関心が高まっているのが、年齢や障害の有無にかかわらず誰でも遊べる「インクルーシブ」である。

 岡山県奈義町は3月、町総合運動公園に大型インクルーシブ遊具を整備。緩やかなスロープを設け、車いすやベビーカーでも安全に上ることができるほか、視覚障害者が楽しめるよう音が出る仕掛けを取り入れた。倉敷市は、6月完成予定の復興防災公園「まびふれあい公園」など2カ所の公園にインクルーシブ遊具を設ける方針を示している。

 一人一人の個性を尊重し、多様性を認める考え方が浸透してきたことが背景にある。安全と利用促進を両立する新たな公園像を模索したい。

(2024年04月25日 08時00分 更新)

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