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岡山の名伯楽

 「名伯楽」と評される指導者が岡山にいる。天満屋女子陸上部の武冨豊監督とバレーボール女子、岡山シーガルズの河本昭義監督。チームでの指導歴は30年を超える▼ともに70歳。共通するのは才能を見抜く眼力と原石を輝かせる育成理論だ。高校や大学で実績がなくとも数年で能力を開花させ、五輪代表などトップレベルに引き上げてきた▼この人も70歳。「岡山から世界王者を」と倉敷市にボクシングジムを開き、40年近く夢を追い続けてきた守安竜也会長である。情熱を注ぎ、鍛えたユーリ阿久井政悟選手が先月、世界ボクシング協会(WBA)のフライ級新王座に就いた▼「素晴らしい素材と出会い、燃え上がるものがあった」。倉敷北中2年で入門したまな弟子にほれ込んだ。スピードとハードパンチを武器に全日本新人王、日本王座獲得と順調にステップを踏んだ▼ただ世界戦までデビューから10年を要した。歴代王者は大半が東京、大阪など大都市のジム所属。ビッグマッチ開催は資金力が不可欠で、練習相手の確保も地方では難しい。そんなハンディを乗り越えた▼歓喜に沸くリング上で守安会長は阿久井選手の手でチャンピオンベルトを巻かれ「感無量だった」と言う。岡山を拠点とする指導者に勇気を与える快挙である。さまざまな競技で、こうした師弟の物語をもっと見たい。

(2024年02月18日 08時00分 更新)

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