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女性弁護士の歩み

 生まれた時に「玲子」と届けるはずが、役場の手違いで「冷子」になった。名前変更を申し立てた家庭裁判所で会った裁判官に憧れて、法律家を志したという▼弁護士として41年のキャリアを積んだ渕上玲子さん(69)が日弁連の次期会長に選ばれた。小林元治会長=津山市出身=の後継で、4月1日に就任する。法曹三者と呼ばれる弁護士、検察官、裁判官で女性がトップに就くのは初めてだ▼「性別にかかわらず会長になるべくしてなった人」。周囲の評を聞くと殊更、女性を強調するのは失礼かとも思いつつ、先人の歩みを振り返れば「女性初」はやはり歴史に刻まれる一歩である▼日本で初めて女性が司法試験に合格したのは1938(昭和13)年。3人の合格を伝える当時の本紙記事には「女弁護士いよいよ登場」の見出しが躍る▼3人のうち1人は丸亀市で育ち、記事には母親の談話も載っている。「いずれは嫁ぐから、そんなに長いことはないでしょう」。母親の本心だったかは分からないが、そう言わざるを得ない時代の空気もあったろう▼大方の予想を覆して女性は仕事を続けて戦後、女性初の裁判官になる。三淵(みぶち)嘉子さんという。4月から始まるNHK連続テレビ小説「虎に翼」のモデルだ。現在、全国の弁護士に占める女性割合は2割。政府が目標とする3割にはまだ届かない。

(2024年02月16日 08時00分 更新)

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