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被災地の恩送り

 善意を与えてくれた本人に恩を返すのは「恩返し」。受けた善意をほかの誰かに渡し、善意をその先へとつないでいくことは「恩送り」と呼ばれる▼恩送りはいま、災害支援の現場で行われている。能登半島地震の被災地には岡山県から多くの支援団体が駆け付けた。その一つが岡山県教委の「災害時学校支援チームおかやま」だ▼2018年の西日本豪雨で倉敷市真備町地区など被災地の学校は避難所になった。混乱し、多忙な教員をサポートしてくれたのが兵庫県教委の「EARTH(アース)」。阪神大震災を機に発足した▼チームおかやまはその経験から岡山県教委が設けた。教職員から希望者を募って災害支援員を養成し、今回が初めての被災地派遣となる。先月半ばから5~6人ずつ交代しながら、石川県七尾市で活動中だ▼学校の早期再開に向け、現地の教員とともに通学路の危険箇所を確認。教室の消毒なども担った。真備町地区で児童の心のケアに取り組んだ養護教諭は、現地の養護教諭らに経験を伝えた▼断水が続く被災地は支援者にとっても厳しい環境だ。それでも登校してきた子どもたちの笑顔に災害支援員は救われた思いがしたそうだ。学校再開の日、現地の校長はチームおかやまを子どもたちに紹介した。災害が多発するこの国で、恩送りの広がりは希望の一つだろう。

(2024年02月08日 08時00分 更新)

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