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裏金事件の首相答弁

 「記憶にございません」と弁明する政治家にうんざりする。「どうせまた…」と諦める自分は相手の術中にはまっていないか―。そんな思いから作家の藤井青銅さんは著書で、国会答弁の構造を独自に分析する▼例えば「丁寧に説明していきたい」。説明するとは確約せず、丁寧の度合いも胸三寸。極論すれば「何もしない」が本音だと。“ごまかし”のテクニックを国民に駆使するのは「誠意がない」と断じる▼自民党派閥の裏金事件を巡り、国会論戦が本格化している。信頼回復へ「火の玉になる」と誓った岸田文雄首相の答弁は何とも歯切れが悪い▼焦点となっている政治資金規正法の改正は各論に踏み込まない。今国会中の法改正は表明したものの「各党各会派と真摯(しんし)に議論する」にとどまる。自民以外の改革案は出そろっている。すぐにでも実現できそうなのに▼政党から議員に配る「政策活動費」の使途公開だけは、かたくなに否定的なのも不可解だ。裏金との関連性が疑われながら「政治活動の自由に関わる」「個人のプライバシーや企業団体の営業秘密を侵害する」と、できない理由を並べる▼〈見てますよ総理の言動国民は〉。きのうの本紙「時事せんりゅう」にあった。首相の答弁を見聞きするにつれ、ごまかしのテクニックが通用する国民だとなめられているような気になる。

(2024年02月07日 08時00分 更新)

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