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やさしい日本語で郷土文化発信 岡山の美術館 外国人の利用促進へ

「やさしい日本語」を使ったワークショップで工芸作品を見て回る留学生ら=2023年11月、岡山県立美術館
「やさしい日本語」を使ったワークショップで工芸作品を見て回る留学生ら=2023年11月、岡山県立美術館
 岡山県内で暮らす外国人が増えている中、岡山市中心部の美術館が、展示案内やワークショップに、外国人にも分かりやすい「やさしい日本語」の導入を進めている。訪れる機会の少ない在留外国人の入場を促し、郷土の文化を広く発信するのが狙いという。

 「伝統工芸とは、地域にある材料を使って昔からの技術と方法でものをつくることです」。2023年11月下旬。特別展「日本伝統工芸展」岡山展を開催中の県立美術館(同市北区天神町)で留学生ら10人がワークショップに取り組んだ。

 やさしい日本語で進行役を務めたのは倉敷市在住の高尾戸美国学院大兼任講師(博物館学)。簡単な日本語は話せるものの、複雑な表現や専門用語の理解は難しいという参加者らが、お気に入りの展示作品を選び、その魅力を平易な表現で語り合った。

 やさしい日本語は、1995年の阪神大震災を機に、災害時に外国人に必要な情報を伝える目的で考案された。外来語やあいまいな表現を避け、簡単な言葉に言い換えるのが特徴で、文化庁などが活用を提唱。既に観光や教育現場での導入が進んでいる。

 同美術館を含む岡山市中心部の「岡山カルチャーゾーン」にある5美術・博物館は高尾さんをアドバイザーに迎え、2023年4月にやさしい日本語の勉強会を開催。活用を検討してきた。

 林原美術館(同市北区丸の内)でも同年9~11月に開いた企画展「使う・繕う・伝える」で展示した中近世の美術工芸品を、やさしい日本語の解説パネルで紹介。橋本龍主任学芸員は「日本人入館者にも『分かりやすい』と好評だった。使える言葉や文字数に制約があるので、工夫しながら活用したい」と語る。

 岡山県の調査によると、県内の2022年の在留外国人数は3万2042人と、この10年間で1万人以上増加している。高尾さんは「やさしい日本語は言葉や知識の壁を越え、子どもや障害者など多くの人の助けになる。県内でも活用の輪が広がってほしい」と期待する。

(2024年01月13日 16時12分 更新)

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