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岡山産マナガツオ 中国輸出が中断 放射線検査鮮度保てず 漁業者打撃

倉敷市下津井地区沖で水揚げされたマナガツオ。中国への輸出が中断している
倉敷市下津井地区沖で水揚げされたマナガツオ。中国への輸出が中断している
 中国が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する計画に反発し、日本からの海産物に全面的な放射線検査を始めたことを受け、岡山県では特産のマナガツオの輸出が中断していることが27日までに分かった。通関に時間がかかり、鮮度を保持できなくなったのが要因。岡山産は品質の良さから中国で人気があり、高値で取引されてきただけに県内漁業者には大きな打撃となっている。

 マナガツオは西日本で多く水揚げされる高級魚で、岡山県は主要産地の一つ。岡山市中央卸売市場では、年間約50トン(2022年度)の県産物が扱われている。その多くを占めるとされる中国向けは10年前から伸びており、市場価格は1キロ3千円以上と当初の約2倍に高騰している。

 しかし、年2、3トンを輸出しているという県漁連によると、中国側の対応を受けて17日以降、冷蔵物の出荷がストップした。税関の放射線検査で5日以上留め置かれて鮮度を保てなくなるためで、県漁連の担当者は「新型コロナウイルス禍が沈静化し、昨年ようやく輸出を再開したばかりだったのに」と肩を落とす。

 マナガツオの水揚げが多い倉敷市下津井地区の第一田之浦吹上漁協では、この1週間ほどで市場への卸値が1キロ当たり500円程度下落したという。しかも、今季は漁が解禁された6月以降の水揚げ量が前年同期の3分の1以下と振るわない。収入の大部分をマナガツオに頼る組合員もおり、生活を直撃している。

 加えてロシアのウクライナ侵攻などに伴う原油高の影響で、船の燃料や網などの資材費も上昇している。岡耕作組合長(46)は「今年は辛抱の年。成り行きを見守るしかない」と半ばあきらめ顔で話す。

 岡山市中央卸売市場では、中国向けに出荷していたマナガツオを国内に振り向ける動きが進んでいるもよう。ただ、市場関係者は「マナガツオは高値で売れる中国向けが多く、日本の食卓からはすっかり遠ざかってしまった。国内で販売するにはさらなる値下げが必要で、漁業者の収入にも響いてくるのでは」と気をもむ。

 県漁連によると、県内の水産物ではヒラもわずかながら中国向け輸出が同様の理由で滞っているという。

(2023年07月28日 05時00分 更新)

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